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映画に行ってきました [映画]

神様はバリにいる

18日に、映画「神様はバリにいる」を観てきました。
面白かったです。多くを期待しなければのことですが。
私は堤真一さんと尾野真知子さんが大好きです。
関西人のハートをもっているからだろうか。等身大の人間性を感じるのです。
難しいことは一切言わないで、『あきらめるな』『努力せい』と言っているような映画でした。

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私は上映室に入るとまず、客層を見ます。
高齢者から若い人、子どもまで来ていました。
日曜日だったからでしょうか。

良かったと思うのは、バリの底辺層というか、バリの生活者を描いていたあたりです。
バリという土地は、リゾート地というゴージャスな面だけがアピールされますが、なかなかどうして。
それに多くのバリ人の俳優さん、子役が出演していたのが良かったです。

この映画の背景には、実在の成功者がいるらしいのですが、そんなことはどうでもよろしいのです。
痛快人情コメディに元気をもらいました。
堤真一の脱色マユゲ、尾野真知子がバリ舞踊のメーキャップのままで走り回るようすが迫力ありました。

こんどは落ち着いた「繕い裁つ人」なんかを観たいです。
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映画 天才スピヴェッツ [映画]

またまた映画

 この「天才スピヴェッツ」は、娘と観に行きました。
以前一緒に観た「アメリ」を作った、ジャン=ピエール・ジュネ監督の作品だったので、ぜひ娘と観たかったのです。
風変りな家族の中で育った10才の天才少年の壮大な冒険物語です。
表向きは、弟を亡くし家の中で孤立したスピヴェットが、スミソニアン博物館の有名な発明賞を受けるために、モンタナからワシントンDCに行く冒険物語を描いた壮大な物語ですが、じつはスピベットの心の中にある弟の死に対する罪の意識との葛藤、家族がきずなを取り戻す家族愛の物語でした。

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フランスの製作、カナダでのロケ、アメリカの物語を描いた3Dの映画です。アメリカの平原を走る弾丸列車、はでな装飾をほどこしたダンプカー、豊かな自然に囲まれた牧場など、3Dの迫力ある映像を駆使した素晴らしい映画でした。今のアメリカが自国でアメリカ人の監督で描いても、このような良き時代のアメリカは描ききれなかったと思います。フランス映画特有のさらりとしたお洒落な映画に仕上がっていました。
スピヴェットに扮したカイルキャトレットは、12歳にして6か国語を話し、武道にも秀でた天才子役で、天才子役が天才の子どもを演じているような格好です。母親にヘレナ・ボナム=カーター、父親役にカラム・キース・レニー、姉役にニーアム・ウィルソンといった役どころで、学校の先生やスミソニアンの館長(ジュディ・ディヴィス)、テレビ番組のキャスターなどの演出もなかなか風刺が効いていていました。
あまり、くどくどとした説明はいっさいなく、観て楽しく、最後にああ良かったと爽やかな後味が残る映画でした。あの「ホーム・アローン」も観て楽しかったですが、あれより嫌味がなく、スピヴェット少年がいとおしいと思えました。
もう一度観たいなと思える映画でした。


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映画「ザ・テノール」 [映画]

久しぶりのは・し・ご

 先日、梅田にあるシネ・リーブルに「聖人たちの食卓」というドキュメンタリー映画を観に行きました。
ある宗教(ヒンズー教?)の寺院が信者に振る舞う食事がなんと10万食。ほとんど会話などがなく、たんたんと料理の準備、食事、後片付けをするシーンが一時間ほど続くだけでした。たくさんの人が食事という唯一の目的をもって、もくもくと営みをするのは、何かすごいことのようでした。
 しかし、吾輩は最後のあたりで眠ってしまいました。

終わってから、少し物足りない感じがして、次にある映画を探しました。すると、40分後に「ザ・テノール」という映画がありました。さっそく、チケットを手に入れて、観ることにしました。


日韓合作の映画で、NHKドキュメンタリーにも紹介されたということですが、良かったです。
日本の俳優は、プロモーションの若き社長役に伊勢谷友介、そのスタッフに北乃きい。韓国からはユ・ジテ。その他オペラ歌手にナターシャ・タプスコビッチ、ティツィアーナ・ドゥカーティ。
ユ・ジテ扮する新進のオペラ歌手に甲状腺ガンが見つかり、手術をするも声帯がとられ、歌手生命が絶たれようとするのを、伊勢谷が励まし、医者を見つけて、奇跡の回復を遂げさせるというストーリーです。

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映画の冒頭部分からいきなりあの「だれも寝てはならぬ」のアリアが始まるのです。音楽好きの私は、ぞくぞくっと体が震えました。そして随所にオペラの有名な曲が、盛り込まれていました。
エンドロールに流れていた曲が気になったので、あとで調べてみました。「女心のうた」に似ていましたが、ちょっと違うようでした。ネットでみるとヴェルディのイル・トロヴァーレのアリア「見よ、おそろしい炎を」という曲でした。

終わって、友だちと二人で「良かったねえ、すごい儲けものをしたね。」と大満足で帰りました。

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チョコレートドーナッツ [映画]

話題の映画を観てきました

 この日は、近所の友だちを病院に朝から連れて行き、1時半には別の友だちと待ち合わせをしていましたが、予想がちょっと甘く、心電図の検査が入ったので、予定より約1時間ていど遅らせて会うことにしました。

先に映画の約束をしていたし、どうしても観たい映画だったので、4時半からのを観ることにしました。

「チョコレートドーナッツ」です。色々なメディアで紹介していて、BSのドラマ「グッドワイフ」で好演しているアラン・カミングが主演しているということでした。あらすじはおよそ知っていましたが、エンディングに打ちのめされました。

最近のアメリカ映画は、シビアなものが多くなってきましたね。
かならずしもハッピーエンドでは終わらない。観た人の心に大きな問題提起をします。
1979年に実際にあった話らしいのですが、まだまだ障害児や同性愛者の人権が確立していない時期の物語でした。今でもまだ人権問題は解決したというのには程遠く、前よりましという程度なんでしょうが。

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主役三人が、いい演技をしていました。
シンガーになる夢をいだきながら、女装をしてオカマバーで日銭をかせぐルディー。エリート弁護士だったが、同性愛者であることがばれて、解雇されるポール。ルディのアパートで夜な夜な客を取る母に追い出されて、街をうろつくダウン症のマルコ。三人が家族になって、小さな幸せをつかもうとしますが、親権を得ようとする裁判で無情の判決が出てしまいます。
その裁判に雇った黒人の弁護士が、言います。「僕たちは法律の学校でならったね。正義なんてどこにもない。だけど、その現実とたたかわなくてはならないんだ。」
私は、もっと違った結末を期待していました。ルディが歌う唄に世間が注目し、それが追い風になって再び、三人が幸せをつかむという結末であってほしいと。
でも、現実は違いました。数年後にポールが当時の担当検事や裁判官に送った新聞には、小さな切抜き記事に意外な悲しい事件が載せられていました。

アラン・カミングはとても感動的な歌声をもっていて、驚きました。どれも良かったですが、エンディングに流れる曲がすてきでした。ちょっとダスティン・ホフマンに似ているなと思いました。

梅田のシネ・リーブルでやっています。  

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映画「25年目の弦楽四重奏」 [映画]

永年の人間関係の修正の物語または終焉と再生

 なんて自分なりにテーマをまとめてみました。
速い話が、映画館に避暑に行ったわけですが、それなら少しでもましな映画を観ようと、はるばる梅田ガーデンシネマへ行きました。

音楽映画が好きなのですが、これは家族や夫婦、仕事仲間の人間関係を弦楽四重奏楽団を通して描いたもので、音楽は二の次でありましたが、ベートーベンが死ぬ半年前に書き上げたという「弦楽四重奏14番」が大事なモチーフになっていて、映画のイメージを構成していることは確かです。

ヤーロン・ジルバーマンという監督・脚本・製作を手掛けた方がすごい。マサチューセッツ工科大学の物理学の学士号とオペレーションズ・リサーチの修士号を持っているという、異色の監督です。アメリカ映画もだいぶ変わってきた感じがします。

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ことは、クリストファー・ウォーケン扮する”フーガ”四重奏楽団のチェリストの、突然の発病から始まる。
第二バイオリン担当のフィリップ・シーモアは、ひた隠しにしていた野望を語りはじめ、ヴィオラ奏者の妻(キャサリン・キーナー)との間に亀裂が生じて行く。二人の愛娘で第一バイオリン奏者をめざすアレクサンドラは、個人的に指導してくれている”フーガ”の第一バイオリン奏者のダニエルとややこしくなってしまうし、とんだ不協和音に陥ってしまう。
しかも、チェリスト引退を飾る演奏会の曲目がベートーヴェンの「弦楽四重奏第14番」。第7楽章まである曲をベートーヴェンは「アタッカ」で演奏するように指示している。つまり、ポーズ(休み)を入れずに演奏するという曲だった。
最後の演奏会の場面が観ている方がはらはらドキドキして、圧巻だった。
チェリストは完ぺきな幕引きをやってのけた。
しかも、なにも語らずして、この集団はあんがいとうまくやっていけるのかもと、安心感を与えてくれるようなエンディングだった。
あの一昨年の映画「オーケストラ」と並ぶ、いい音楽映画だったと思う。音響も素晴らしく、ちょっとした音のズレなんかも素人でも分かるようにしくんであった。音楽院での学生への指導の場面も良かったなあ。

終わってみると、観に来ている人がほとんどが女性であったのが、ちょっと残念でしたね。


ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第14番

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第14番

  • アーティスト: スメタナ四重奏団,ベートーヴェン
  • 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 2004/03/24
  • メディア: CD



ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全

  • アーティスト: ジュリアード弦楽四重奏団,ベートーヴェン
  • 出版社/メーカー: ソニーレコード
  • 発売日: 1997/06/21
  • メディア: CD



ベートーヴェン : 弦楽四重奏曲 第10番 変ホ長調 作品74 「ハープ」

ベートーヴェン : 弦楽四重奏曲 第10番 変ホ長調 作品74 「ハープ」

  • アーティスト: グァルネリ弦楽四重奏団,ベートーヴェン
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2000/09/23
  • メディア: CD



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映画『あなたへ』 [映画]

 やっぱり観てきました

 高倉健の「あなたへ」は、あらすじや前評判を聞いて、もう観なくてもいいかと思っていた。
しかし、先日大滝秀治さんが亡くなられたと聞き、やはり観ておかなくてはと思った。大滝秀治さんは、本当に演技の上手い存在感のある人だったもの。あの声、語り口調が好きだった。
いっぽう、健さんはみんながもてはやすほど、よく知らない。おそらく、不器用で朴訥な人なんだろう。

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この映画は、最愛の妻の死を乗り越えようとする一人の男が今後の生き方を模索する姿を描いたものだ。
ビートたけしが扮する「自称元国語教師」が(旅)と(放浪)の違いを語る。(旅)とは目的をもったものであり、(放浪)とは、それがなく、しかも帰るところがない。健さんが扮する役どころは、妻の遺言である「故郷の海に散骨」を実現してやろうという目的を持った(旅人)だった。
妻は二通の遺言を託し、一通は「散骨してほしい」という内容、もう一通は故郷の郵便局に局留めするという手の込んだもの。中味は「・・・」の一言だけだった。

旅の途中に、健さん扮する刑務所の木工指導員が様々な人間との交流やら、妻との思い出がさしはさまれる。思い出の場所に選ばれたところは、私も知っている場所が多かった。
「散骨」という行為は、なかなか難しいことだ。地元の方もあまりいい顔をしない。それを引き受ける漁師役に大滝秀治がなっている。自尊心と人情の葛藤をもつが毅然とした老人を演じていた。
最後の場面で、旅の途中に知り合ったわけありの男に、一枚の写真を渡すのだが、ちょっとびっくりした。
しけで遭難したはずの男が別の人生を送っている。江戸時代の昔なら、ありそうなことだが、今でもあるのかなと。

あまり、テーマを掘り下げた部分は感じられなかったけれど、娯楽映画としては良かったかなと思う。

もう一つ、健さんがらみで。

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映画「天地明察」 [映画]

囲碁と数学と天文学

 もう二週間ほど前になるが、友だちと「天地明察」という映画を観に行った。
2010年度「本屋大賞」を受けた冲方丁の同名小説は、一年以上前に読んでいたが、面白かったので、中味もよく覚えていた。
映画の監督はあの「おくりびと」の滝田洋二郎監督である。原作を忠実に雰囲気を壊さないで、美しい映画になっていたと思う。

まず、神社の場面であるが、安井算哲(岡田准一)が新しい算額がかかっているのを見つける。出題者は関孝和(市川猿之助)。神社の境内を村瀬塾の村瀬義益の妹えん(宮崎あおい)が掃除をしていた。算哲は問題を大急ぎで写して、江戸城に登城する。

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江戸城で待っていたのは、天覧碁・・・将軍の前でお手本になるような囲碁の勝負を見せるのだ。相手は、囲碁の天才、本因坊道作策(横山裕)。道策は算哲に古い手を繰り返さず新しい勝負をしようと持ちかける。そして、算哲は、つねづね考えていたある手を打つ。それは、<初手天元>碁盤の中央、北極にあたる場所から打ち始める。
囲碁は、古代中国では占星術と関連があったらしく、様々な星や宇宙にまつわる言葉が使われる。
しかし<初手天元>というのは、囲碁の常識では考えられないほど、ありえない手だった。その勝負は決着がつかず、算哲・道策ともども師匠に大目玉をくらうことになる。

いっぽう算哲は、その和算の能力を買われて、幕府の保科正之(松本幸四郎)から暦を改定するための観測の旅に随行するように命じられる。
そのころ、宣命歴という中国の唐の暦を使っていたが、862年に作成されたもので江戸時代の当時、あれこれと狂いが生じ始めていた。日本各地のデータを集めて、「授時歴」という暦が一番信頼性がおけるという事が判明し、朝廷に採用するように働きかける。しかし、昔から暦は朝廷の権限であり、なかなか許可が出ない。陰陽師の宮栖川友麿(市川染五郎)が、大統歴を持ち出してくる。大統歴と授時歴の予想較べがはじまり、授時歴が正確さで優勢と見られたが、最後の日食のところで予想が外れてしまう。

算哲は、長い間待たせた村井塾のえんと祝言をあげ、ともに予想が外れた訳を解明しようとする。
そして、中国と日本の観測場所の経度の差に気が付き、授時歴を日本の経度に合わせ改良を加える。
それが、大和歴というもので、朝廷が採用することになり、名前を「貞享歴」に改めて使用することとなった。

私は、以前井上ひさしの「四千万歩の男」という小説を読んだ。
北極星の位置を各地で観測することで、緯度1度の距離を知るというものだったと思うが、それが日本の初めての正確な地図を作り出すという偉業につながった。その時も感動したのだが、こういうスケールの大きな話が大好きだ。それに通じるものが「天地明察」にはあった。

わりと平和な話なので、小説にはない戦闘場面が出てきて、算哲の恩師が殺されるというエピソードが挿入されていた。各地の観測場所には、景色のいいところが選ばれていて、たしか兵庫県朝来市の竹田城の城跡も出てきたと思う。さすが滝田監督、映像美にあふれていたと思う。ただ、囲碁や天文学についての専門知識や用語が出ていたので、素人の観客には不親切だったかなと思うふしもあった。
他に水戸光圀役に中井貴一、算哲の盟友安藤有益に渡辺大が出ていた。岡田准一は、なかなかいい演技をしていた。


 
四千万歩の男(一) (講談社文庫)

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  • 作者: 井上 ひさし
  • 出版社/メーカー: 講談社
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天地明察

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  • 作者: 冲方 丁
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2009/12/01
  • メディア: 単行本



スタンドL・天地明察 ルナ~月ごよみ~(2013年版卓上カレンダー)

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: トーダン
  • 発売日: 2012/09/05
  • メディア: カレンダー



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映画二本 [映画]

近頃のヨーロッパ映画

 先日、梅田ガーデンシネマで「ル・アーブルの靴磨き」を観てきた。
(最高のハッピーエンド)というコメントが、観たいなという気持ちにさせた。
映画は、深刻なテーマをはらむ内容でも、やはり後味がいいものを観たいから。

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監督は、アキ・カウリスマキ。製作国はフィンランド・フランス・ドイツ。
初老の靴磨きのマルセル・マルクスが、アフリカからの密入国者の少年イドリッサと偶然出会ったことによって、いつもの生活から行動を起こす物語だ。
町の人は、マルセルがつけでパンや雑貨を買って行くので、あくたいを浴びせている。
貧しい人たちが溜まる酒場では、冗談をいいつつも、どことなくひょうきんで温かい。
質素なくらしを支えている無口でやさしい妻が、マルセルの稼ぎの中から酒代を取り分けてくれる。
脱走したイドリッサを、鬼刑事が探している。そのイドリッサを母親のいるロンドンに送り届けるために、マルセルは奔走する。最後の場面で刑事がイドリッサを発見・・・というところで奇跡が・・・。

詩情豊かで、ほっと心が温かくなるような映画だった。
それにしても、密航という問題は、ヨーロッパでは日常茶飯事のようだ。
移民も多くて、貧困層が逆に自分たちの権利が侵されるのではと心配して、反移民を唱えているのが現実だ。おそらく、そういった現状につぶてを投げたかったのかもしれない。

二日置いて、同じ劇場の隣でやっていた映画「オレンジと太陽」というのを観に行った。
これは、「児童移民」といういっそう?深刻なテーマを扱った映画だった。いっそう深刻と書いたのは間違いで、映画の描き方の違いによるものかもしれないが。
こちらは、イギリス=オーストラリア合作の映画で、監督はジム・ローチ、初の長編映画だそうだ。
ヒロインは、「戦火の馬」の母親をやっていたエミリー・ワトソン。普通のおばさんが、悩みながら、真実を追求する姿勢がよかった。

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エリザベス女王在位60年とロンドンオリンピックにわくイギリスであるが、4世紀にわたり、13万人もの3歳からティーンエイジャーまでの児童を、国家の政策として、植民地であるオーストラリアに「輸送」していた。
原作は、マーガレット・ハンフリーズの「からのゆりかご」で、マーガレットがヒロインとして登場する。
児童の多くは、「両親はなくなった」「オーストラリアでは、太陽が温かく、毎日オレンジが食べられる」などの美辞麗句で、何千Kmも海をへだてたオーストラリアに運ばれる。
ソーシャルワーカーのマーガレットが、調査を始めたきっかけは、1人の女性シャーロットが、「自分はいったい誰なのか調べてほしい。」という依頼を投げかけたことに始まる。
その調査を始めるうちに、子どもたちが教育の機会も与えられず、強制労働に従事させられたり、虐待や性的暴力の被害があったことなどが明らかになっていく。
そして、その政策の実行にはカトリック系のビンドゥーンという孤児院の存在が明らかになる。
信者から、脅迫の電話やトラストの宿舎への迫害を受けるようになり、ある時期、マーガレットは、PLSDの症状が出るようになる。しかし、移民した児童が大人になってから、母親に会えたことの喜びをマーガレットに伝えるなどがあって、また調査を続ける勇気を取り戻していく。

つい先ごろ、2009年には、オーストラリアの首相が、“忘れられた子どもたち”に対して正式に謝罪をしたという。2010年には、イギリスのブラウン首相も議会で謝罪を行ったという。
マーガレット・ハンフリーズは、今もたくさんの「元児童移民」の人たちの調査を続けているという。
現在進行形のこの問題は、歴史の裏側に隠されているため、なかなか認めようとはしないし、掘り起こすのがむずかしい。しかし、このことは人間の尊厳という大事な原則を考えさせてくれる。


からのゆりかご―大英帝国の迷い子たち

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  • 作者: マーガレット ハンフリーズ
  • 出版社/メーカー: 近代文藝社
  • 発売日: 2012/02/10
  • メディア: 単行本



からのゆりかご―大英帝国の迷い子たち

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  • 作者: マーガレット ハンフリーズ
  • 出版社/メーカー: 日本図書刊行会
  • 発売日: 1997/07
  • メディア: 単行本



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ヒューゴの不思議な発明 [映画]

大人も子どもも楽しめるファンタジー

 時間ができたので、「ヒューゴの不思議な発明」という映画を観に行った。
先日、ラジオ深夜便で映画の紹介をしていたので、これは観たいなあと思っていた。

3時20分の上映時間にぎりぎりセーフだった。入っている客は、子連れの人が多かった。小学生くらいなら十分理解ができそうな映画だった。

時代設定は、第一次世界大戦後。パリの駅。巷には多くの孤児があふれていて、駅の公安官が血眼になって、孤児を捕まえようとしていた。ヒューゴ・カブレは、駅の時計台に住みつく少年。時計職人だった父親が、戦火でなくなり、機械仕掛けの人形を一つだけ抱えて、父の知り合いの時計係の男に拾われる。
少年が時計台の内側から垣間見る外側の世界に、おもちゃ屋の主人がいた。この主人がかつて映画の魔術師ともてはやされたジョルジュ・メリエスだった。このメリエスもさきほどの公安官も戦争で心が壊れ、冷酷なまでに人間性を失った人間だった。おもちゃ屋の主人の養子にイザベルという少女がいて、ヒューゴの支えになっていく。父が残した機械人形を修復し、なぞを解いていくヒューゴの行動が、傷ついた人々の魂を溶解し、癒していくという物語である。

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監督はマーティン・スコセッシ
おもちゃ屋ジョルジュ…ベン・キングスレー
ヒューゴ…エイサ・バターフィールド
イザベル…クロエ・グレース・モレッツ
鉄道公安官…サシャ・バロン・コーエン
ヒューゴの父…ジュード・ロウ

驚いたのは、マーティン・スコセッシ監督がはじめて3Dを手掛けた作品だということだ。なかなか効果的に3Dが使われていて、初めの方で空から雪景色の町がだんだんアップになっていくあたりの立体感が素晴らしく、雪の一粒一粒が迫って来るようだった。そのほか、鉄道公安官の顔や犬のドーベルマン顔が少年を追いかける様子を、よく表わしていて効果的だと思った。
しかし、あの3Dメガネというのが、なんともいただけない。すでにメガネをかけている者にとっては、ずり落ちそうになって、気になる。なんとか改良の余地はないものか。

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それから、俳優で言えば、二人の子役の上手さ、重要さはいうまでもなかったが、おもちゃ屋を演じていたベン・キングスレーは、なんと「ガンジー」に主演していたらしい。そういえば、面影がある。
それと、パンフ情報になるが、鉄道公安官になっていたサシャ・バロン・コーエンという人は、2013年公開予定のフレディー・マーキュリーの自伝映画に出るとのことだ。そういえば、雰囲気がなかなか似ている。

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児童文学が原作らしいが、イギリスでは課題図書として親しまれているそうだ。
視覚的にも優れていて、なかなかいい映画だった。
マーティン・スコセッシ監督は、無声映画やトーキー映画の時代をこよなく敬愛していて、映画の中にもふんだんに古い時代の映画が登場する。1950年代にも立体映画があったらしいが、古い時代の映画とデジタル化された現代の3Dの合体という点でも、面白かった。


ユゴーの不思議な発明

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天守物語 [映画]

シネマ歌舞伎

 木曜日の夜、友だちとシネマ歌舞伎の「天守物語」を観に行った。
泉鏡花の三部作の一つで、姫路城の伝説がもとになっているので、一度観たいものだと思っていた。

坂東玉三郎が、富姫。市川海老蔵が図書ノ助。亀姫に中村勘太郎。朱の盤坊に中村獅童。その他。

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あらすじはこうだった。

姫路城の天守閣に住む異界の住人の富姫は大勢の腰元や家来と住んでいる。
中央に天守閣の守り神の巨大な獅子頭が置いてある。
腰元が天守閣から釣りをしているのが、面白かった。釣れるのは、秋の花々。
そこへ猪苗代湖の方から、鬼や貴女を従えて雲に乗り、亀姫が訪ねてくる。富姫にてまりを教えてもらうためらしい。
天守夫人である富姫が外出から雲に乗って帰ってくるが、下界ではちょうど姫路藩主が雷雨に降られて、鷹狩から帰ってくる。宴会が始まり、亀姫は猪苗代亀ヶ城の城主の首をみやげに渡す。その顔は、姫路藩主の顔とそっくりで、どうやらいとこ同士にあたるらしい。
亀姫が帰ろうとするが、ちょうど迷い込んだ鷹がいて、富姫は鷹をみやげにするように進める。

亀姫が帰ったあと、富姫が一人になったとき、階下の方から逃げた鷹を追って、図書ノ助が上がってくる。鷹を逃がした罰に、妖怪が住むと言い伝えのある天守閣に探しに行かされたのだ。
一目見るなり、富姫と図書ノ助はお互いに恋をしてしまうが、結局とどめることはできず、鷹の代わりに家宝の兜を与えて帰す。もうここへは絶対に来るなと言い含めて。
ところが、家宝の兜はもともとは姫路藩主のものだったので、図書ノ助は家臣に追われる立場になり、また天守閣に戻ってくる。大きな獅子の被布に隠してやるが、見つかってしまい、獅子の眼に刃を突き刺され、二人とも失明する。獅子頭に隠してあった猪苗代亀ヶ城の城主の首がみつかり、家臣たちは驚いて、天守閣から引き上げる。失明した二人は、相手が見られなくなって悲嘆にくれる。
そのとき、柱の中から大きな音響とともに、獅子頭を彫った彫師の老人があらわれる。「私がもう一度眼に光をあたえましょう。」といって、獅子頭の眼を彫り込むと、二人はまた見えるようになる。
異界の者と人間の恋物語であったが、歌舞伎というより、新劇風であった。

それにしても、玉三郎と海老蔵は美しい。歌舞伎の醍醐味は期待できなかったが、妖艶な鏡花の世界を堪能した。
姫路は私が生まれた場所なので、城には小さいころから何度も行ったことがある。
たしかに天守閣には、お社があったと記憶しているが、あれは刑部明神だった。
調べてみると、富姫という神もまつられているらしく、太古の昔に都からこの地に移り住んで館をかまえ、そこから姫山という地名が生まれたということだった。刑部神と富姫は同一ではないようだ。

今度、鏡花の「海神別荘」がある。また、観に行きたい。





夜叉ヶ池・天守物語 (岩波文庫)

夜叉ヶ池・天守物語 (岩波文庫)

  • 作者: 泉 鏡花
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1984/04/16
  • メディア: 文庫



海神別荘・他二篇 (岩波文庫)

海神別荘・他二篇 (岩波文庫)

  • 作者: 泉 鏡花
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1994/04/18
  • メディア: 文庫



高野聖・眉かくしの霊 (岩波文庫)

高野聖・眉かくしの霊 (岩波文庫)

  • 作者: 泉 鏡花
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1992/08
  • メディア: 文庫



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