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『天地明察』 [本]

知的冒険の本

 5月の連休明けに購入していた「冲方丁」(うぶかたとう)の『天地明察』を、昨日の7日読み上げた。毎週、BS2の週間ブックレビューで面白そうな本をチェックしているのだが、これもその一冊だ。過去に読んだ時代物の傑作、「いのうえひさし」の『四千万歩の男』でいたく感動した私は、その分野の本だなとぴんと来た。それから、主人公が幕府の碁方であり、算術家であり、天文学者であるという点にも惹かれた。

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<あらまし>
幕府の碁方として、江戸城に上覧碁を打ちに行く渋川春海(安井算哲)は、碁を極めるだけの日常に飽いていた。そんな日、関孝和の非凡な算術の才能を知り、作問を投げかける。数日後、春海の設問は解答が出せない「無術」という愚問であったことが、関の気配から知れる。自分の未熟さに打ちひしがれる春海。数日後、老中の酒井忠清から建部という右筆の旗本と伊藤という御典医たちと共に日本各地の北極星の測量をしろという密命が下り、出発する。そして、天測を元にした計算で現在使われている宣明暦が、誤っていることに気付かされる。そこから、春海の新しい暦作りが始まって行く。

<感想>
私は、前述の『四千万歩の男』の感動を今一度という思いで読んだ。碁も算術もその内容にあまり、深入りはしていなかった。碁は昔、中国で占星術に使われたということは知っていた。天元が北極星だということも、三々が星と言われることも知っていたので、もう少し深入りしてほしかった。算術の方は、解答の意味が少々はしょってあったので、分かりにくかった。その代わり、神道がやたら詳しく書いてあった。それは、暦というものがその時その時の権力者の手中にあったのだから、当然といえば当然だが。それから、会津藩の保科正之という人と大老になった酒井忠清という人の偉さがよく分かった。三大将軍の家光の頃に次々と幕府の体制を固めることになったシステムが、保科の建白によるものだと分かった。
そして、幕府天文方が作られたのは、渋川春海の功績によるものであるが、多くの智の結集によって成し遂げられたものでもあるのだ。およそ100年の後、『四千万歩の男』である伊能忠敬も幕府天文方に関わっていく。「いのうえひさし」と「冲方丁」を較べてはかわいそうだが、いのうえが書いたものは、名文で読み物としても非常に長く、おしまいまで楽しませてくれ、なおかつ、年をとってからでも、可能性があるという勇気をもらった。「冲方丁」のは、いわば青春の書、見ていてはらはらするような内容、主人公が鍛えられていく過程がほほえましくもあった。とにかく、外国から輸入した暦ではなく、日本人が自分の国の暦を血のにじむような努力で作成したことは、快哉だといえよう。
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コメント 4

masayuk

本を読むことっていいですよね。
結構読み始めると入り込む性格なんですが、個人的に段々と老眼になってしまい本を読むことが辛くなりました。
めげずに少しずつ また読み始めます。


by masayuk (2010-08-10 12:35) 

Ranger

うぶかたとうって読むんですかぁ
whitered さんの感想を読んでいると、興味が沸いてきますね
by Ranger (2010-08-10 13:28) 

whitered

masayukさんへ:コメントありがとうございました。お返事遅くなり、すみません。私も同様で、最近は眼が霞むことが多いので、目薬を注してみたり、大きな虫眼鏡を使うなどしていますが、眼が疲れついうとうとしてしまいます。面白い内容であれば、読める状態が続きます。
by whitered (2010-08-16 12:38) 

whitered

Rangerさんへ:コメントありがとうございました。返事が遅くなり、すみません。私も最初は、<おきかたてい>なんて読んでいました。この方は、ゲームやアニメの物語も手がけられるそうですよ。機会があれば、お読みくださいね。
by whitered (2010-08-16 12:42) 

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