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顔見世に行く [古典芸能]

旧友を誘って

 21日は、大学時代の友人を誘って京都南座の「吉例顔見世興行」に行きました。
歌舞伎を観たいと言っていた友人のために発売日は何度も電話口でねばって、チケットを手に入れました。
午後の部は遅くなるので、朝早い友人にはきつそうなので午前の部を取りました。
10時半開演なので、逆算すると8時半には最寄駅についておかないといけません。

朝は6時前に起きれたので、きものを着る時間がありました。
京阪電車でもなんとか座れて、京都に着いたのが10時10分。ちょうどいい時間でした。

DSC00581-1.jpg

今日の午前の演目は、
一、寿曽我対面 一幕
二、お江戸みやげ 三幕
三、隅田川
四、与話情浮名横櫛 二幕
でした。

このところ、風邪気味とあって、客席でせきが出ないように風邪薬を飲んでいったものだから、何度もとろとろしました。とくに文語調の台詞回しの「寿曽我対面」や清元舞踊の「隅田川」は、夢幻の中に引きこまれました。「隅田川」の衣装や舞台は非常にうつくしく、坂田藤十郎の所作も幽玄そのものでした。せりふを聞き取ろうとして、注意していましたが、「あの鳥は、沖の鴎・・・千鳥・・・都鳥」というあたりになってうとうとしてしまいました。柳かなにかの枝を持って出てくるので、我子を尋ねて半狂乱になったのだなと解りました。

「お江戸みやげ」と「与話情浮世横櫛」は口語体の台詞なので、内容もよく解りました。どちらも初めて見る演目だったので、興味が持てました。
「お江戸みやげ」は、川口松太郎の世話物で、喜劇仕立てです。
湯島天神の芝居茶屋が舞台になっていて、お紺という娘と役者の栄紫がいいかわした仲ですが、継母の常磐津の師匠の文字辰が、お紺を金持ちの妾にしようと企んでいます。反物を行商して、売り上げをもって故郷に帰る女二人が茶屋にあらわれます。一人は中村翫雀ふんするおゆうで、さっそく大好きな熱燗を所望します。もう一人は三津五郎ふんするお辻。金勘定に余念がなく、しっかりもののようです。ところがお酒を飲むと、とんだ一面があるようで、それがこの芝居の伏線になっているようです。茶屋の女に勧められて二人の女は、芝居を観る。その中の栄紫を観たお辻は、はじめて恋のような感情をもつ。ところが、お紺と栄紫の事情を目の当たりにし、二人が結ばれないのは二十両というお金を文字辰に返さないといけないと知る。酒を飲んで、いい気持ちになったお辻は、栄紫に反物の売上げをすべてやってしまう。栄紫はせめて肌着の片袖を礼にとお辻にさしだす。喜ぶお辻、そんな布きれに十三両も出したのかいとあきれるおゆう。
お金の値打ちは人それぞれですが、生まれて初めて好きになった人を救うために使った十三両。二人の女のほのぼのとしたやりとりがとても面白かったです。高田郁の『銀二貫』という小説を思い出しました。

「与話情浮名横櫛」は、あまりにも有名な場面があるお芝居です。二幕仕立てになっていて、中が抜けているので、ちょっと経過が分かりにくかったのですが、台詞の中でああなるほどなと解るようになっていました。
場面は、(木更津海岸見染の場)と(源氏店の場)の二幕で、一幕目は赤間源左衛門の妾お富と伊豆屋若旦那の与三郎(片岡仁左衛門)が出会う場面です。ビリビリっと感じ合ったときにお互いに「いい景色だな・・・」と見つめ合う場面です。二幕目ははじめ、粋な黒塀、見越しの松に・・・の歌の通りの小粋な黒く塗られた塀と枝垂れた松が登場する。そこへ風呂上がりのお富(中村時蔵)が侍女と現われる。そのあと回り舞台で、座敷の場面となる。
本当は、3年も日が経っていて、木更津で見染合った二人は、源左衛門の目を盗んで逢瀬をかさねていたのです。ある日現場を押さえられ、与三郎は体中を切り刻まれる。お富は与三郎が死んだと思って、海に身を投げるが和泉屋多左衛門という男に助けられ、源氏店に住んでいる。
ある日、蝙蝠安(尾上菊五郎)という小悪党が傷を手拭いで隠した男を連れて、源氏店に小遣い銭をせびりにやってくる。
そして、有名な『ええ御新造さんへ、おかみさんへ、いやさお富、久しぶりだなー。』という場面になる。
ほっかむりをスパっとはずして、久しぶりだなーのくだりで、「いよー、待ってました。」の声がかかる。
そのあとの展開は、ちょっと拍子抜けがするもので、帰ってきた多左衛門が安五郎にこごとを言いながらも、兄だと紹介された与三郎に「商売でも始めな」といって、金を渡す。いったん家出る二人だが、与三郎は裏口から帰ってくる。座敷では、多左衛門が『へその緒書き』というものをお富に渡し、家を出ていく。その書付には、兄が多左衛門であるとのことが書いてあった。それを見た与三郎は、自分たちの間にはなんの障壁もないということが解って、二人が結ばれるというものであった。

私は、筋書きを最後までは知らなかったので、なんだハッピーエンドなんだ、と思いました。切られの与三郎なんてちょっと物騒な感じだったので、恨みつらみが前面に出ている物語だと思っていました。まあ、ハッピーエンドで終われば申し分ないのですが。

尾上菊五郎さんは、今まではずっと与三郎やお富を演じてきた人で、今回「蝙蝠安」は自分から買って出られたそうです。汚れ役なので、意外な気がしましたが、ユーモラスな感じも上手く演じていました。
仁左衛門さんは、与三郎の役は十回目だそうで、これも戦後で一、二を争うぐらいの数の多さだそうです。
決め台詞に至る二人の調子は、なかなか息が合っていて、さらりと後味すっきりしたいい芝居でした。

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午前中のお客さんは、なんといってもお年寄りが多かったです。私たちが出るころは、午後の観客が入り口でおおぜい待っておられました。




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