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映画二本 [映画]

近頃のヨーロッパ映画

 先日、梅田ガーデンシネマで「ル・アーブルの靴磨き」を観てきた。
(最高のハッピーエンド)というコメントが、観たいなという気持ちにさせた。
映画は、深刻なテーマをはらむ内容でも、やはり後味がいいものを観たいから。

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監督は、アキ・カウリスマキ。製作国はフィンランド・フランス・ドイツ。
初老の靴磨きのマルセル・マルクスが、アフリカからの密入国者の少年イドリッサと偶然出会ったことによって、いつもの生活から行動を起こす物語だ。
町の人は、マルセルがつけでパンや雑貨を買って行くので、あくたいを浴びせている。
貧しい人たちが溜まる酒場では、冗談をいいつつも、どことなくひょうきんで温かい。
質素なくらしを支えている無口でやさしい妻が、マルセルの稼ぎの中から酒代を取り分けてくれる。
脱走したイドリッサを、鬼刑事が探している。そのイドリッサを母親のいるロンドンに送り届けるために、マルセルは奔走する。最後の場面で刑事がイドリッサを発見・・・というところで奇跡が・・・。

詩情豊かで、ほっと心が温かくなるような映画だった。
それにしても、密航という問題は、ヨーロッパでは日常茶飯事のようだ。
移民も多くて、貧困層が逆に自分たちの権利が侵されるのではと心配して、反移民を唱えているのが現実だ。おそらく、そういった現状につぶてを投げたかったのかもしれない。

二日置いて、同じ劇場の隣でやっていた映画「オレンジと太陽」というのを観に行った。
これは、「児童移民」といういっそう?深刻なテーマを扱った映画だった。いっそう深刻と書いたのは間違いで、映画の描き方の違いによるものかもしれないが。
こちらは、イギリス=オーストラリア合作の映画で、監督はジム・ローチ、初の長編映画だそうだ。
ヒロインは、「戦火の馬」の母親をやっていたエミリー・ワトソン。普通のおばさんが、悩みながら、真実を追求する姿勢がよかった。

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エリザベス女王在位60年とロンドンオリンピックにわくイギリスであるが、4世紀にわたり、13万人もの3歳からティーンエイジャーまでの児童を、国家の政策として、植民地であるオーストラリアに「輸送」していた。
原作は、マーガレット・ハンフリーズの「からのゆりかご」で、マーガレットがヒロインとして登場する。
児童の多くは、「両親はなくなった」「オーストラリアでは、太陽が温かく、毎日オレンジが食べられる」などの美辞麗句で、何千Kmも海をへだてたオーストラリアに運ばれる。
ソーシャルワーカーのマーガレットが、調査を始めたきっかけは、1人の女性シャーロットが、「自分はいったい誰なのか調べてほしい。」という依頼を投げかけたことに始まる。
その調査を始めるうちに、子どもたちが教育の機会も与えられず、強制労働に従事させられたり、虐待や性的暴力の被害があったことなどが明らかになっていく。
そして、その政策の実行にはカトリック系のビンドゥーンという孤児院の存在が明らかになる。
信者から、脅迫の電話やトラストの宿舎への迫害を受けるようになり、ある時期、マーガレットは、PLSDの症状が出るようになる。しかし、移民した児童が大人になってから、母親に会えたことの喜びをマーガレットに伝えるなどがあって、また調査を続ける勇気を取り戻していく。

つい先ごろ、2009年には、オーストラリアの首相が、“忘れられた子どもたち”に対して正式に謝罪をしたという。2010年には、イギリスのブラウン首相も議会で謝罪を行ったという。
マーガレット・ハンフリーズは、今もたくさんの「元児童移民」の人たちの調査を続けているという。
現在進行形のこの問題は、歴史の裏側に隠されているため、なかなか認めようとはしないし、掘り起こすのがむずかしい。しかし、このことは人間の尊厳という大事な原則を考えさせてくれる。


からのゆりかご―大英帝国の迷い子たち

からのゆりかご―大英帝国の迷い子たち

  • 作者: マーガレット ハンフリーズ
  • 出版社/メーカー: 近代文藝社
  • 発売日: 2012/02/10
  • メディア: 単行本



からのゆりかご―大英帝国の迷い子たち

からのゆりかご―大英帝国の迷い子たち

  • 作者: マーガレット ハンフリーズ
  • 出版社/メーカー: 日本図書刊行会
  • 発売日: 1997/07
  • メディア: 単行本



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