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初芝居は文楽で [古典芸能]

見応えあり!初春公演

 今年の初観劇は文楽にしました。
新しい大阪市長になってから、動員数に合わせて助成金を出すという方針なので、とりあえず動員の一人になろうじゃないのということで、友だちを誘って国立文楽劇場に行ってきました。
初春公演は、第一部が『寿式三番叟』『義経千本桜』『増補大江山』で、第二部が『団子売』『ひらかな盛衰記』『本朝廿四考』という出し物でした。
私たちは第二部を見ることにし、日本橋へ急ぎました。

二等席はほとんど席がありませんでしたが、一等席はまだ余裕があったので、前から四番目に陣取りました。

『団子売』は、清元の『玉兎月景勝』を義太夫節に移したものです。
杵造とお臼という団子売りの夫婦が揃いの淡い水色の衣装で出てきました。口上を述べた後、餅をつくしぐさを取り入れて、軽妙な踊りを披露します。お臼はお多福の面をかぶった人形に変化して、目出度さを盛り上げます。杵造の餅をつく手がリアルでした。

『ひらかな盛衰記』は、文耕堂、三好松洛、浅田可啓、竹田小出雲、千前軒の合作で1739年に初演されたといいます。源平盛衰記をわかりやすく書き改めたものとされています。

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松右衛門内の段は、漁師の権四郎(かしら 武氏)と娘のおよし(かしら 老け女方)、およしの子として育てられている駒若君(かしら 男子役)、入り婿となっている松右衛門じつは木曽義仲の旧臣樋口次郎兼光(かしら 文七)が出てきます。村の婆や嬶が権四郎の家に来て、三年前に亡くなったおよしの先夫のくやみを述べる際に、権四郎は孫の槌松(およしの子)が大津の宿で今の子と取り違えられたことを言います。そのうち、槌松を連れてきて、今いる子と引き替えてくれるだろうとも。
そこへ義仲の夫人の腰元をしていたお筆(かしら 娘)がやってきて、槌松は駒若君としてりっぱに死んだことを伝え、本物の駒若君を返してくれるように頼みます。およしはその場に泣き崩れ、権四郎は怒り心頭、駒若君の首をとって返すとまで言います。そこへ、松右衛門が駒若を抱いて現われ、大恩を受けた主君の子を助けてほしいと権四郎にたのみます。
お筆は、松右衛門に駒若をたくして立ち去ります。

逆櫓の段、この物語で一番ダイナミックな場面です。大道具に海をあらわす布が掛けられ、船が一艘、その中には松右衛門、丸胴に黒の蛸絞り、大坂手甲という颯爽とした船頭のいでたち。ほかに船頭が二人。実はこの二人は景時(義経方)の命を受けた重忠の手の者。逆櫓を松右衛門から教わるふうをして捕まえに来た。逆櫓とは、前にも後ろにも自在に船をあやつる術で、タコツカミという人形の手を駆使して、櫓を漕ぐ動作をする。三味線も波のうねりをあらわすように勇壮な音、語りの方も「ヤツシツシ」と力が入る。
陸に上がった松右衛門を待ち受けていたのは、重忠の手の者。権四郎が重忠に訴え出たようだ。松右衛門は、権四郎を恨むが真意をさとる。駒若君は大津で死んで、この家にいるのは先夫の子、松右衛門を差し出す代わりに血を分けた孫は渡されぬと重忠に訴える。
権四郎の意図を知った松右衛門は、樋口次郎兼光として潔く捕まる。

『本朝廿四孝』は、あの三姫の一人、八重垣姫と勝頼の物語です。
十種香の段は、天王建ての御殿が舞台。真ん中に瓦燈幕。花作りの蓑作(じつは勝頼 死んだことになっている かしら 若男 衣装は綸子に白地錦の熨斗目に浅黄錦の長裃)

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 パンフレットの模様は、勝頼の長裃の布地模様です。

館の両袖に二つの部屋があり、上手(かみて)に死んだ勝頼の絵姿をかけて拝む八重垣姫(かしら 娘 赤姫の衣装で髪は十能で四段の花簪)下手には、腰元の濡衣(かしら 娘 衣装は黒ちりめん 髪は文金)
実は勝頼の身代わりとして死んだ若者の恋人で、蓑作とともに謙信の館に忍び込んでいる。
八重垣姫は、蓑作を見て死んだはずの勝頼だと見抜くが、蓑作は違うの一点張り。濡衣に恋の仲立ちを頼むが濡衣は、「この館にある信玄公の家宝、法性の兜を探してくれたら教えよう」といいます。
いっぽう、謙信は蓑作が勝頼であることを知っていて、諏訪湖の向こうへ使いをさせ、道中で勝頼の命を奪おうと画策をします。

奥庭狐火の段 夜の奥庭、上手には法性の兜がまつられている御堂がある。狐火が二つゆらゆらと青い火かげを揺らせている。石灯篭の影から狐が出てきて、御堂の法性の兜の中に入り込む。
勝頼に危険を知らせようと、八重垣姫は案じる。この身に翼があったなら、飛んで勝頼の元にいけるのだが、女の足ではかなわない。おや先ほど池の面に映るは狐の姿。ふと法性の兜に眼をやる。「狐は諏訪湖の神の使いと聞く。この兜の霊力があれば、諏訪湖も溺れずに渡れよう。」
姫は法性の兜を頭にかざす。たちまち霊力を顕わし、姫の衣装は白地に赤い狐火に変わり、四匹の狐が守護する図となる。そこで幕が下りるのだが、勝頼は無事命拾いし、二人は結ばれる筋書きとなっている。

見応えがありました。一番よかったのは、「逆櫓」の場面です。すっきりとした海原が舞台で、鉢巻姿の文七人形が大見得を切るあたり、迫力満点でした。次に「本朝・・・」の狐火の段、本物の狐火が出たとばかり、度胆を抜きました。もちろん勝頼と八重垣姫、濡衣のあでやかな三様。八重垣姫の幼い恋心を人形遣いがうまく表していて思わず微笑んでしまいました。『団子売』もひょうきんで、きれいな舞台でした。

歌舞伎の半分くらいの料金で、同じくらいの満足度が得られるので、また何度でも来ようと思いました。
初春公演は25日までやっています。
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