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N響コンサートの日だった (続き) [音楽]

ブラボーな演奏

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 さて、いよいよ演奏が始まった。前の日も寝不足だったので、早めに席に座って、少しまどろむことにした。だから、オーケストラが全員座ったことは知らなかった。

 指揮者のジェームズ・ジャッド氏(英)が入場してきたので、目が覚めた。私が前もって眠るのは、かんじんの演奏でばっちり聴いていたいからだ。
 1曲目はドヴォルザークの『序曲「謝肉祭」作品92』、短いが陽気な作品だった。指揮者のジャッド氏は、手首がやわらかい繊細な動作で指揮をとっておられた。

 いよいよ2曲目のモーツァルト『ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 k.467』である。ピアノ協奏曲というのは、3楽章からなるものが多い。モーツァルトは、17曲ものピアノ協奏曲を書いている。フリーの音楽家になったモーツァルトは、演奏会でみずからがピアニストとして演奏し、作曲で力を発揮すると同時に、演奏の腕も披露した。何より、演奏会での資金調達が重要だっただろう。今回のピアニストはジョナサン・ビス氏。手足の長い若手のアメリカのピアニストだった。
 第1楽章では、モーツァルトらしい明るくテンポの速い曲調で、終わりごろでは交響曲第41番(?)を思わせるようなフレーズが二度ほど出てくる。
 待望の第2楽章。まずオーケストラで主題部分が演奏される。バイオリン、ヴィオラのなんという繊細な音であろうか。プログラムを読むと弱音器というのが取り付けてあったそうだが。そのあと同じ主題をピアノがデリケートに語り始める。モーツァルトのころはたぶんチェンバロ風な音がしたんだろうなと思いながら、スタインウエイ&サンの音色に耳を澄ます。バイオリン・ヴィオラ、チェロ、コントラバスのすべての弦楽器がピチカート(つま弾き)奏法で後押しをする。映画の『みじかくも美しく燃え』にこの第2楽章が、使われたのだそうだが、テーマの冒頭の複付点四分音符がやさしくやさしく入っていく。くり返す主題が、まるでボレロの時のように盛り上がっていく。バックのピチカートがよけいに、行け行けと命令する。なんともいえない恍惚感が満たしていき、クラシックの醍醐味に酔いしれる。ゆっくりしたリズムと甘美なメロディーの結婚のようだ。
 第3楽章は、モーツァルト持ち前の早いテンポの軽快な音楽となって、しめくくる。まだ第2楽章の余韻を残したまま。



三曲目はブラームス

曲は、『交響曲第4番 ホ短調 作品98』

 私は、長い間ベートーベンから離れられないでいたが、最近ラフマニノフやチャイコフスキーやブラームスの曲にも親しみが持てるようになってきた。ブラームスが生涯で作曲した四つの交響曲の最後のもので、1885年に完成したものだ。
 第1楽章の主題は、短調が用いられていて、やや暗い憂いに満ちた曲想である。私なんかは演歌調を感じたり、近代的なものを受けてしまうのだが、古典派よりも前の時代の要素が取り込まれているのだそうだ。
 第2楽章は、ホルンなど金管楽器が、あこがれに満ちたロマンティックな部分です。ゆっくりとくり返し主題が語られます。
 第3楽章では、明るいはつらつとした音楽になるが、ところどころにトライアングルが可愛い音を響かせていた。ブラームスがティンパニ以外の打楽器を用いた唯一の楽章なんだそう。
 やがて第4楽章へ。第1楽章で聴いたような深刻な感じの導入。3拍子の変奏形式で構成される。バッハのカンタータにあらわれる旋律を変形して、この楽章のテーマとしたそうだ。起伏の多い、情熱的な楽章である。
   
 ブラームスは、多くの古典派の作曲家の音楽をよく研究しているそうで、天才的な先人がたくさんいたため、自分の作風を生み出すのに苦労したのではないかと思われる。

 最後に、みんな割れんばかりの拍手をした。ほんとにNHK交響楽団は、よく訓練された楽団だった。とくに、繊細な弱音での演奏は、得も言われぬ音を出していた。これも、年間で54回の定期公演と約120回の演奏活動をしている実績があるからか。

 アンコール曲は、ブラームスの『ハンガリー舞曲 第4番 ト短調』だった。これはよく聴く曲だが、早いテンポのバイオリンが奏でる乱舞風の曲と、思いっきり甘いスローなバラードが交互に組み合わされたお洒落な曲であった。ジェームズ・ジャッド氏は、楽しそうに踊って指揮をされていた。

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 時計を見ると、午後6時。演奏時間は2時間に満たなかったことになるのだが、中味が充実していたので、大満足であった。やるなあ、N響はと思いながら、シンフォニーホールを後にした。

 

  
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コメント 6

ヒデキヨ

大人のN響の楽しみ方を堪能されている とお見受けしました
by ヒデキヨ (2009-07-20 22:50) 

whitered

コメントありがとうございます。クラシックは選びに選んで、聴いているつもりなんですが、今回のN響は素晴らしいものでした。いつまでも心に残ると思います。
by whitered (2009-07-21 07:30) 

masayuk

いや~豪華な選曲ですね~。
個人的には、ブラ4が好きですよ。
N響には、定期演奏会にしばしば足を運びます。
どちらかと言えば、東フィルが好きなんですが、N響も
聞かせますね。

by masayuk (2009-07-22 08:00) 

whitered

masayukさんへ:コメントありがとうございます。今回は大好きな曲ばかりでした。いまだに『ハンガリー舞曲第4番』のあのしゃくれたメロディーが、脳裏に浮かび、鳴っているようです。CDでは味わえないような、希少価値がありました。N響が来たら、また行ってみたいです。
by whitered (2009-07-22 08:14) 

room7

素晴らしい解説です! 思い描きながら読んでいました。
by room7 (2009-07-25 20:14) 

whitered

room7さんへ:コメントありがとうございます。感動的なコンサートでした。半年くらいは、浸れそうです。
by whitered (2009-07-25 21:28) 

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