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天守物語 [映画]

シネマ歌舞伎

 木曜日の夜、友だちとシネマ歌舞伎の「天守物語」を観に行った。
泉鏡花の三部作の一つで、姫路城の伝説がもとになっているので、一度観たいものだと思っていた。

坂東玉三郎が、富姫。市川海老蔵が図書ノ助。亀姫に中村勘太郎。朱の盤坊に中村獅童。その他。

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あらすじはこうだった。

姫路城の天守閣に住む異界の住人の富姫は大勢の腰元や家来と住んでいる。
中央に天守閣の守り神の巨大な獅子頭が置いてある。
腰元が天守閣から釣りをしているのが、面白かった。釣れるのは、秋の花々。
そこへ猪苗代湖の方から、鬼や貴女を従えて雲に乗り、亀姫が訪ねてくる。富姫にてまりを教えてもらうためらしい。
天守夫人である富姫が外出から雲に乗って帰ってくるが、下界ではちょうど姫路藩主が雷雨に降られて、鷹狩から帰ってくる。宴会が始まり、亀姫は猪苗代亀ヶ城の城主の首をみやげに渡す。その顔は、姫路藩主の顔とそっくりで、どうやらいとこ同士にあたるらしい。
亀姫が帰ろうとするが、ちょうど迷い込んだ鷹がいて、富姫は鷹をみやげにするように進める。

亀姫が帰ったあと、富姫が一人になったとき、階下の方から逃げた鷹を追って、図書ノ助が上がってくる。鷹を逃がした罰に、妖怪が住むと言い伝えのある天守閣に探しに行かされたのだ。
一目見るなり、富姫と図書ノ助はお互いに恋をしてしまうが、結局とどめることはできず、鷹の代わりに家宝の兜を与えて帰す。もうここへは絶対に来るなと言い含めて。
ところが、家宝の兜はもともとは姫路藩主のものだったので、図書ノ助は家臣に追われる立場になり、また天守閣に戻ってくる。大きな獅子の被布に隠してやるが、見つかってしまい、獅子の眼に刃を突き刺され、二人とも失明する。獅子頭に隠してあった猪苗代亀ヶ城の城主の首がみつかり、家臣たちは驚いて、天守閣から引き上げる。失明した二人は、相手が見られなくなって悲嘆にくれる。
そのとき、柱の中から大きな音響とともに、獅子頭を彫った彫師の老人があらわれる。「私がもう一度眼に光をあたえましょう。」といって、獅子頭の眼を彫り込むと、二人はまた見えるようになる。
異界の者と人間の恋物語であったが、歌舞伎というより、新劇風であった。

それにしても、玉三郎と海老蔵は美しい。歌舞伎の醍醐味は期待できなかったが、妖艶な鏡花の世界を堪能した。
姫路は私が生まれた場所なので、城には小さいころから何度も行ったことがある。
たしかに天守閣には、お社があったと記憶しているが、あれは刑部明神だった。
調べてみると、富姫という神もまつられているらしく、太古の昔に都からこの地に移り住んで館をかまえ、そこから姫山という地名が生まれたということだった。刑部神と富姫は同一ではないようだ。

今度、鏡花の「海神別荘」がある。また、観に行きたい。





夜叉ヶ池・天守物語 (岩波文庫)

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  • 作者: 泉 鏡花
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1984/04/16
  • メディア: 文庫



海神別荘・他二篇 (岩波文庫)

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  • 作者: 泉 鏡花
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1994/04/18
  • メディア: 文庫



高野聖・眉かくしの霊 (岩波文庫)

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  • 作者: 泉 鏡花
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1992/08
  • メディア: 文庫



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コメント 4

koji

こんにちは!お久しぶりです。
「天守物語」!私の大好きなお話です。
しかも、坂東玉三郎!
昔彼の監督、富姫役の映画を見て、
天守物語の図書ノ助がでてくるまでの、
言葉の美しさに、何度も何度も見て、
「皆さんの、お心入れのお供え物の~」
の後に、お腰元皆で
「それこそ露の散らぬ間に」と笑いさざめきながら言うところとか、
亀姫(宮沢りえでした)と富姫の美しい言葉のやり取り。
扇を使った、二人のしぐさ(このときはじめて、首実験の時に、扇の骨の間から見る作法tとか)。
本当に覚えたくなるような言葉の言い回しですよね。
(#^.^#)
by koji (2012-02-29 16:29) 

whitered

kojiさんへ:お久しぶりです。「天守物語」はずっと前から気になっていました。なんども演じられているのですね。亀姫はりえちゃんでしたか。
それにしても、よく台詞を覚えておいでですね。本当にうつくしい日本語としぐさでした。様式美と妖艶さと引き付けられるものがありました。
鏡花三部作ぜ~んぶ見たいです。
更新する時間がなくて、困っています。
そうそう、梨木香歩さんの「僕は、そして僕たちはどう生きるか」を図書館で見つけました。今、インジャが出てくるところを読んでいます。
by whitered (2012-03-01 00:24) 

koji

まいどです。お邪魔します。
「僕は、そして僕たちはどう生きるか」お読みになっていますか!?
インジャがでてきましたか~
また、読んだときの気持ちがよみがえってきました。(>_<)
いい話・・・というか、ぐっときますよね。
by koji (2012-03-02 12:33) 

whitered

kojiさんへ:コメントを再度ありがとうございます。今日は3月5日なんですが、記事を「僕は・・・」にするか、「ヒューゴの不思議な・・・」にするか、迷っていました。「僕は・・・」の方は、それなりにきちんと書きたいので、後に回しました。また記事にしたいので、感想は待ってくださいね。言えることは、人物の心理描写や性格付けがていねいに掘り下げて書いてありますね。本当に敬服します。
by whitered (2012-03-05 02:11) 

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