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「紀ノ川」 [本]

有吉佐和子の本

 「紀ノ川」という本を読むきっかけになったのは、BS3で山田洋次が選んだ日本の家族100選の映画「紀ノ川」である。最後のあたりで、病床の祖母に孫娘が古典を読んで聞かせるところで、妙に印象に残った部分があった。
(・・・御門はじまり給いてより、八十二代にあたりて後鳥羽院と申すおはしましき。御諱は尊成【たかひら】・・・)
以前の記事で後鳥羽院に関するものを数回書いたと思うが、またしてもこの部分が気になり、原作を読んでみたいと思った。
有吉佐和子では、「複合汚染」という本があまりにも有名で、読んだ記憶があるが、早速文庫本を買って読んでみた。

有吉佐和子の故郷、和歌山が舞台になった明治・大正・昭和を生きる女、なんと五代にわたる物語であった。和歌山は大阪から近く、九度山や根来寺などは行ったこともあったので、親しみが持てた。
九度山、紀本の大地主の大ごっさんといわれる豊乃、娘、孫娘の花、花の娘の文緒、文緒の娘の華子と女性の血縁が、まるで紀ノ川の豊かな水流のように時代とともに続く物語であった。
時代にしたがって、女性たちの感性や思想が世相に影響されて、変わっていく。しかし、紀ノ川が満々と水をたたえ、今も変わらずに流れているように、女性たちの中にも故郷を愛し、懐かしむ心がかわらずにあるように思った。

くだんの台詞は、花が六十谷【むそだに】の地で病に臥せっているときに、孫娘の華子が本を読んでやっている場面であった。出典は、増鏡でちょうど後鳥羽院のあたりを読み聞かせていた。
一つ謎がとけた感がした。

この「紀ノ川」は、地方のブルジョワジーが当時いかに贅沢でたいそうな暮らしをしていたかが解って、面白かった。たとえば、花が紀本から六十谷へ嫁ぐとき、かごに乗って、そのかごを舟に乗せて、二日がかりで行く場面である。婚礼も三日三晩、衣装をとっかえひっかえして行ったようだ。
きものも京都で誂え、こまごまとした種類も書いてあり、面白かったので、最後まで一気に読んでしまった。

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次は、三部作といわれる「日高川」か「有田川」を読みたいと思い、本屋に行ったがあいにくなかった。
そのため、「香華」という分厚い文庫本を買った。
まだ数十ページしか読んでいないが、やはり、和歌山の地主階級の家に生まれた女性とその娘が登場する。東京へ舞台を移し、また静岡に移すが、そのつど落ちぶれていく。母子の葛藤と人生が描かれているようだ。
文庫本は、字が小さく目が疲れるのだが、楽しみで読んでいる。


一の糸 (新潮文庫)

一の糸 (新潮文庫)

  • 作者: 有吉 佐和子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/10
  • メディア: 文庫



華岡青洲の妻 (新潮文庫)

華岡青洲の妻 (新潮文庫)

  • 作者: 有吉 佐和子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1970/01
  • メディア: 文庫



和宮様御留 (講談社文庫 あ 2-1)

和宮様御留 (講談社文庫 あ 2-1)

  • 作者: 有吉 佐和子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1981/07/13
  • メディア: 文庫



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