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時代小説 二冊 [本]

葉室麟の小説

 一冊目は、「蜩の記」。昨年度直木賞を受けた時代小説だ。2~3日で読んでしまったが、友人になかなか返すチャンスがなくて、いまだ手元にある。
ストーリーは、江戸時代のある時期。満開の山桜がはらはらと散る谷川のそばの道を歩む、檀野庄三郎が石つぶてで川魚を仕留めている少年郁太郎に出会う場面から始まる。
この少年の父、戸田秋谷は藩主の側女と不義密通をして、小姓を切り捨てたという罪で山間の屋敷に幽閉されている。
本来なら死罪という罪らしいが、藩の事情もあって、10年間藩の家譜編纂ののちに切腹ということになっている。庄三郎は、城勤めでささいなことから喧嘩沙汰を起こし、その罰として戸田秋谷の家譜編纂の仕事を助けながら見張り、10年後の切腹の見届け役を仰せつかることになって、戸田家に住みつくのだ。

秋谷の娘、薫とのロマンスあり、家譜編纂を調べるうち不審な事件を発見したり、藩と百姓の間の様々な出来事があったり、ついには庄三郎は、秋谷が身に覚えのない冤罪を背負うことに甘んじていることを知ってしまう。

というようなストーリーで、小説はハッピーエンドでは終わらない。しかし、なんとなく未来に明るい展望というものを、しっかり前面に押し出した後味の良さというものが伝わった作品であった。

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この葉室麟という人は、私と同世代の人のようで、作品もたくさんある。
図書館で、探してみると、
「実朝の首」というの本があった。もちろん借りて読んだ。
北条政子や公暁、私が興味を持ってきた「ゴトバンサン」こと後鳥羽上皇も登場する。
後鳥羽さんが水瀬付近で捕まえた盗賊で、子飼いの家来となった交野三郎(だったかな)も登場し、実朝の首をめぐって、朝廷・源氏・北条氏の三つ巴の争いが起きる。やがて、承久の乱が起こり、北条氏の天下となるのだが、鎌倉幕府の形成期の混沌とした世の中をうまく可視化した小説になっていると思った。
その中で、ちょっと気になったのは、摂津源氏や河内源氏という言葉があったこと。
摂津源氏というのは、鬼退治で有名な源頼光の父、多田満仲が兵庫県川西市多田に拠点を置いたことから、摂津源氏と言ったらしい。
河内源氏というのは、私の息子の家になっている太子町の家に行くときに、源義家の墓という看板があることが気になっていた。あの八幡太郎義家、源頼朝も足利尊氏もよりどころとした武家の始祖と英雄視される源義家は、大阪府羽曳野市出身だったのだなあ。へぇーとトリビア的な感動である。
かくいう私はだんなの家が、平家筋というからややこしい。あの明恵上人も母方が源氏方で、父方が平家方と言ったらしいから、出家するはめになったのかもしれない。
まあ、大きな目でみたらいい。人のはじめは、猿だったんだから。

とにかく葉室麟さんの本は面白かった。また、探して読んでみよう。


実朝の首

実朝の首

  • 作者: 葉室 麟
  • 出版社/メーカー: 新人物往来社
  • 発売日: 2007/05
  • メディア: 単行本



乾山晩愁 (角川文庫)

乾山晩愁 (角川文庫)

  • 作者: 葉室 麟
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2008/12/25
  • メディア: 文庫



秋月記

秋月記

  • 作者: 葉室 麟
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2009/01/26
  • メディア: 単行本



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