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映画「天地明察」 [映画]

囲碁と数学と天文学

 もう二週間ほど前になるが、友だちと「天地明察」という映画を観に行った。
2010年度「本屋大賞」を受けた冲方丁の同名小説は、一年以上前に読んでいたが、面白かったので、中味もよく覚えていた。
映画の監督はあの「おくりびと」の滝田洋二郎監督である。原作を忠実に雰囲気を壊さないで、美しい映画になっていたと思う。

まず、神社の場面であるが、安井算哲(岡田准一)が新しい算額がかかっているのを見つける。出題者は関孝和(市川猿之助)。神社の境内を村瀬塾の村瀬義益の妹えん(宮崎あおい)が掃除をしていた。算哲は問題を大急ぎで写して、江戸城に登城する。

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江戸城で待っていたのは、天覧碁・・・将軍の前でお手本になるような囲碁の勝負を見せるのだ。相手は、囲碁の天才、本因坊道作策(横山裕)。道策は算哲に古い手を繰り返さず新しい勝負をしようと持ちかける。そして、算哲は、つねづね考えていたある手を打つ。それは、<初手天元>碁盤の中央、北極にあたる場所から打ち始める。
囲碁は、古代中国では占星術と関連があったらしく、様々な星や宇宙にまつわる言葉が使われる。
しかし<初手天元>というのは、囲碁の常識では考えられないほど、ありえない手だった。その勝負は決着がつかず、算哲・道策ともども師匠に大目玉をくらうことになる。

いっぽう算哲は、その和算の能力を買われて、幕府の保科正之(松本幸四郎)から暦を改定するための観測の旅に随行するように命じられる。
そのころ、宣命歴という中国の唐の暦を使っていたが、862年に作成されたもので江戸時代の当時、あれこれと狂いが生じ始めていた。日本各地のデータを集めて、「授時歴」という暦が一番信頼性がおけるという事が判明し、朝廷に採用するように働きかける。しかし、昔から暦は朝廷の権限であり、なかなか許可が出ない。陰陽師の宮栖川友麿(市川染五郎)が、大統歴を持ち出してくる。大統歴と授時歴の予想較べがはじまり、授時歴が正確さで優勢と見られたが、最後の日食のところで予想が外れてしまう。

算哲は、長い間待たせた村井塾のえんと祝言をあげ、ともに予想が外れた訳を解明しようとする。
そして、中国と日本の観測場所の経度の差に気が付き、授時歴を日本の経度に合わせ改良を加える。
それが、大和歴というもので、朝廷が採用することになり、名前を「貞享歴」に改めて使用することとなった。

私は、以前井上ひさしの「四千万歩の男」という小説を読んだ。
北極星の位置を各地で観測することで、緯度1度の距離を知るというものだったと思うが、それが日本の初めての正確な地図を作り出すという偉業につながった。その時も感動したのだが、こういうスケールの大きな話が大好きだ。それに通じるものが「天地明察」にはあった。

わりと平和な話なので、小説にはない戦闘場面が出てきて、算哲の恩師が殺されるというエピソードが挿入されていた。各地の観測場所には、景色のいいところが選ばれていて、たしか兵庫県朝来市の竹田城の城跡も出てきたと思う。さすが滝田監督、映像美にあふれていたと思う。ただ、囲碁や天文学についての専門知識や用語が出ていたので、素人の観客には不親切だったかなと思うふしもあった。
他に水戸光圀役に中井貴一、算哲の盟友安藤有益に渡辺大が出ていた。岡田准一は、なかなかいい演技をしていた。


 
四千万歩の男(一) (講談社文庫)

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  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1992/11/04
  • メディア: 文庫



天地明察

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スタンドL・天地明察 ルナ~月ごよみ~(2013年版卓上カレンダー)

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