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ジャズの楽しみ<2> [音楽]

ジャズとクラシックの関係

 前回<1>と書いたからには、<2>を書かねばの義務感からではないが、そろそろいいころあいだと思ってUPする。
ひと月にCDに使うお金は、だいたい2500円から5000円というところだ。先月は、3倍ほど買ってしまった。クラシックが2枚とジャズが3枚だ。今の私には贅沢すぎる出費だ。
 そのうち、ジャズで掘り出し物を見つけた。Harry Allenの「VIVA BOSSA NOVA」がそれである。私の場合は、CD屋さんで試聴してからいいと思ったものを決める。テナーサックスのゆったりした曲がほしかったので、探した。そして、上記のものに行き当たった。
 ボサ・ノヴァというのは、「新しい傾向」という意味らしい。ボサ・ノヴァが誕生したのは、ジョアン・ジルベルトの「想いあふれて」が大ヒットした1958年だといわれている。ジルベルトとスタン・ゲッツは1960年にアメリカにおけるボサ・ノヴァの金字塔『ゲッツ~ジルベルト』を生み出した。今回のアルバムは、ゲッツの流れを汲むハリー・アレンが、ボサ・ノヴァ50周年を記念して、これまでの再演曲を含む集大成としてのボサ・ノヴァを収録したものだ。

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 アルバムの曲は、(1)波 (2)デサフィナード (3)ジンジ (4)マシュ・ケ・ナダ (5)ルック・トゥ・ザ・スカイ (6)オルフェのサンバ
(7)ビーイン・グリーン (8)トリステーデ (9)サムワン・トゥ・ライト・アップ・マイ・ライフ (10)セーラ・ダ・エストレーラ (11)あなたのせいで (12)アル・カホン (13)ハウ・インセンシティブ の13曲だ。

(1)(3)(5)はアントニオ・カルロス・ジョビンの作曲。(2)はジョアン・ジルベルトの「想いあふれて」と同時に収録されたもので当時としては画期的な内容を持ったものらしい。(4)はセルジオ・メンデスの十八番で有名。(6)と(9)は、ボサ・ノヴァに火をつけた映画『黒いオルフェ』がらみの曲。主題歌の方ももの悲しい曲で大好きだった。(7)(8)(10)(11)(12)もそれぞれもの憂い、あるいはサンバを取り入れた陽気な曲が収録されている。
 そして、いよいよ最後の曲(13)。私はこの曲にあぜんとしたのだ。どこかで聴いた曲。なつかしい曲。
作曲は、上記のカルロス・ジョビンだという。題は(ばかげたこと、軽率な言動)というような意味らしい。
なんと、この曲はショパンの前奏曲op.28のno.4ではないのか。



 しかも、<1>で取り上げたスティーブ・キューンの中にも収録されていて、そちらの方はちゃんとショパンのPrelude In E Minor Op.28 No.4となっている。私は、ハリー・アレンとスティーブ・キューンとBlechaczのショパンを聴き比べた。何度も。私の結論は、ショパンのプレリュードが原典で、ボサ・ノヴァの曲に編曲したのが、ジョビンということだ。あまりにも酷似しているので、それしか考えられない。まあ、こんなことはよくあるのかも知れない。シベリウスの『フィンランディア』の一部が賛美歌に使われているのと同じようなものかも知れない。しかも、You Tubeで調べて見ると、「A comme Amour」の題でクレイダーマンが編曲したりしている。あまりにも優れた曲の運命なのかもしれない。そして、どうやらジャズの定番らしいのだ。
 思索的な出だし、夢うつつに迷い込むひととき、厳然たる現実に引き戻され、そして孤独の中の安らぎに身をまかせる・・・
テナーサックスがなんともいい。甘美で、別世界に引きずり込まれるような音色である。圧倒的な音楽の力を感ずる。
 当分、ボサ・ノヴァのとりこになってしまう予感がする。



ビバ!ボサノバ

ビバ!ボサノバ

  • アーティスト: ハリー・アレン,クラウス・ミューラー,パット・オレアリー,ジョー・アシオーネ
  • 出版社/メーカー: カメラータ・トウキョウ
  • 発売日: 2008/05/25
  • メディア: CD




ワンス・アポン・ア・サマー・タイム

ワンス・アポン・ア・サマー・タイム

  • アーティスト: ハリー・アレン,マウシャ,ドリ・カイミ,デニス・アーウィン,ジョー・コーン,ラリー・ゴールディングス,ドゥドゥカ・ダ・フォンセカ
  • 出版社/メーカー: BMGメディアジャパン
  • 発売日: 1999/05/21
  • メディア: CD



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オール・リスト・プログラム [音楽]

久しぶりのクラシック

 6月1日、職場の元同僚をおさそいして、朝日新聞のチャリティーコンサート・近藤嘉宏さんの「オール・リスト・プログラム」に行ってきました。会場のフェスティバルホールは、今年の秋から約5年がかりで、朝日新聞社の社屋と共に改築するようです。
チャリティーとあって、料金二千円はずいぶんとお得です。もちろん、プラスαの義援金は覚悟の上ですが。4時過ぎに着いて、まず往復はがきをチケットに交換しました。LサイドD列22番とあって、左側の前から4列目です。こんな前は、初めてかも。

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 オール・リストも初めてです。最近、「ラ・カンパネラ」や「愛の夢」などのCDはよく聴いているので、なんとなく親しみはありました。
フランツ・リスト(1811~1886)は、ショパンやベルリオーズ、ワグナーなどと年代が重なっていて、近代のピアノコンサート形式を確立した人のようです。また、ショパンの曲を世に出すのにも、後進を育てるのもずいぶん尽力したらしいです。

http://kwne.jp/~liszt/liszt&pianomusic.html

 今回のプログラムは、以下のとおりです。
<第1部>
      コンソレーション(慰め) 第3番 変ニ長調
      ピアノ・ソナタ ロ短調
<第2部>
      パガニーニによる大練習曲 第3曲 嬰ト短調 「ラ・カンパネラ」
      村の居酒屋での踊り(メフィスト・ワルツ第1番)
      愛の夢 第3番 変イ長調
      超絶技巧練習曲 第4曲 ニ短調 「マゼッパ」
      ハンガリー狂詩曲 第2番 嬰ハ短調
<アンコール曲>
      ハンガリー狂詩曲 第6番

 さて、近藤嘉宏さんですが、昨年の11月だったか、ベートーベンとショパンの内容で同じ朝日新聞のチャリティーコンサートでお会いして、二度目になります。背の高いハンサムな青年?(1968年生まれだそうです)で、非常に丁寧な繊細な弾き方をされるのではと思います。今回のオール・リストは、初めての演奏形式だそうですが、ピアノ・ソナタ ロ短調を正式に弾かれるのも初めてとのことでした。実は学生時代に課題曲として何度も練習された曲で、13年間封印し、いつか弾いてやろうと温めてこられた曲だそうです。この曲に魅了されたのは「音楽の枠のすごい広さですね。音楽の世界から飛び出しているというか、人生そのものを表現しているように感じたからです。・・・」と言っています。事実、この曲はリストのただ一つのピアノ・ソナタです。それほどこのソナタ一曲の中に、注ぎ込んだ想いが、充分満足のいくものだったということでは、ないでしょうか。彼自身、ソナタはリストのピアノ曲の中の最高傑作だと言っています。
 そして、リストは「血湧き、肉躍る」世界を持っている、聴いて楽しいが、観ても楽しいとおっしゃっている。なるほどあらゆる技巧を駆使しないと、リストは弾けないようです。『超絶技巧』がほとんどの曲に要求されるのではないかと思います。私の好きな『愛の夢』は、近藤さんは若い頃、「くさくて気持ちが悪い。」とおっしゃっていたようです。「当時は自分のキャパシティーを超えていたんでしょうね。」とも、「今はロマンティックな作品に対してもアレルギーはありません。」とインタビューに答えていました。・・・ああ、よかった、という思いです。
 じつは、朝日のチャリティーコンサートには、曲目だけのプログラムだけではなくて、演奏家に対してのインタビューという形で、かなり詳しいパンフレットがいただけるのです。これを読むと、演奏家の歩んでこられた様子や曲に対する思いや自分の演奏の工夫など、かなりの情報が得られるのです。海外の演奏家のコンサートの場合とずいぶん違うところです。

 今回は近藤さんのCDを買いました。そして、おまけがついていたのです。コンサートが終了してからの、サイン会に参加できるというものです。私も、好奇心からサインをしてもらいに並びました。連れの方も妹と称して、並んでもらうことに。そして、ゲットしたのがこの銀色のマーカーで書かれたYoshihiroのサインです。そして、妹役さんは、なんと握手してもらっていましたよ。そっちの方が良かった~なんて。
 今回のコンサートでの雑感は、リストは奥深いということ、近藤さんは今後も自分の演奏を追及していかれるんだろうな、また聴いてみたいなということでした。

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次回の近藤嘉宏さんの ピアノ三大作曲家 名曲探訪の旅は、以下のとおり。

 8月10日 オール・ベートーベン・プログラム

 11月23日 オール・ショパン・プログラム   いずれもフェスティバルホール

  

近藤嘉宏 / 「アダージョ・カラヤン」へのオマージュ

近藤嘉宏 / 「アダージョ・カラヤン」へのオマージュ

  • アーティスト: 近藤嘉宏,バッハ,シベリウス,マーラー,パッヘルベル,マスネ,ブラームス,ビバルディ,グリーグ,モーツァルト,アルビノーニ
  • 出版社/メーカー: マーキュリー・ミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 1999/06/02
  • メディア: CD



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ジャズの楽しみ<1> [音楽]

始まりの1枚

 いままでにもジャズは、何度か聴いてきたが、自分が求めたCDで眼が開かされたのは、これが初めてだ。演奏はスティーブ・キューン・トリオで題して、『亡き王女のためのパバーヌ』。どうも私の場合は、クラシックが原点のようだ。3年ほど前に、ラベル作曲のクラシックCDを探していたら、偶然ジャズのおすすめコーナーにこれがあった。試聴してみるとなかなかいい。軽快なスイング感とアンニュイでおしゃれな雰囲気がほどよくマッチしている。
 それ以来、手持ち無沙汰の夜などは、クラシックを聴いているか、これを聴いているかだ。アルバムは日本のジャズレーベル、ビーナスが企画して作ったらしい。

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 ピアノトリオのメンバーは、まずピアノはスティーブ・キューン。この方は、若き日にジョン・コルトレーン・カルテットにもいたらしい。(コルトレーンの『クル・セ・ママ』はよかったなあ・・・)  ベースはデヴィッド・フィンク。ドラムはビリー・ドラモンド。

 アルバムの内容は全部、クラシックからのアレンジである。

1.アイム・オールウェイズ・チェイシング・レインボウズ(F・ショパン)
   聴いた時は、ショパンのなんという曲か分からなかった。副題にFantasy Impromptuとあるの
 で、『幻想即興曲』ではないかと思う。もちろん、聴いたことのあるフレーズは登場するのだが、形を
 とどめないくらいにスクラップ&ビルドしてある。ベースの音も軽やかに洒脱に響く。

2.亡き王女のためのパバーヌ(M・ラベル)
   原曲の持つ哀愁を帯びた曲想を保ちながら、ジャズの軽快なリズムにオプティミズムが感じられ
  る。私は、この曲が好きだ。

3.ムーン・ラブ(P・チャイコフスキー)
   なんとピアノ協奏曲第五番ではないか。これまた大・大好きな第二楽章のセンチメンタリズム極ま
 りないフレーズが、小躍りしながら甦っている。まったく、驚かされる。ジャズを知り尽くした人のアレ
 ンジメントなんだろう。

4.ワン・レッド・ローズ・フォーエヴァー(E・グリーグ)
   この原曲は知らない。

5.白鳥の湖(P・チャイコフスキー)
   いいぞ、まるでコンテンポラリーなダンス版のように、気取らない、乗りのいいテンポで流れてい
  く。

6.夜想曲変ホ長調 作品9 第二番(F・ショパン)
   映画『愛情物語』でカーメン・キャバレロが弾いていたノクターンである。ジャズや軽音楽でおなじ
  みの曲で、静寂で無理のないジャズに仕上がっている。

7.リベリイ(C・ドビュッシー)
   スマートで都会的な曲だ。さすが、フランスの作曲家だけにね。

8.前奏曲ホ短調 作品28 第四番(F・ショパン)
   3つ目のショパンの曲で、スローな重厚な曲に仕上げてある。鍵盤の上で音がはじけているよう
  な快さがある。ベースとドラムが絶妙にからみ合っている。

9.フル・ムーン・アンド・エンプティー・アームズ(S・ラフマニノフ)
   これも有名なラフマニノフのピアノコンチェルト第二番第三楽章である。お洒落なラフマニノフが、
  よりいっそう小粋に聴こえる。後半ベースのおしゃべりが楽しい。

10.パバーヌ(C・フルレ)
    亡き王女よりも前の作品、やはりどことなく哀愁をたたえている。ベースがかき口説くように歌
   い上げる。じっくり聴きたい部類の音楽である。

11.ララバイ(J・ブラームス)
    いわゆるブラームスの子守唄。やさしいタッチの鍵盤が、無垢な美しさをかなでる。余韻がい
   つまでも残っている。

  私のようなクラシック至上主義がたどるジャズのアプローチとしては、なかなかふさわしい出会い
 が、このアルバムによって実現したのではないかと思う。

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               大泉緑地の山ぼうし

ビーナスレコードがいい音で試聴できます。
http://music.e-onkyo.com/artist/m080411_R.asp




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NHK教育 藝術劇場 [音楽]

アンドラーシュ・シフの演奏

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   写真は記事と関係ありません。あしからず。

 4月18日土曜日の午後10時半からでした。ちょっとだけ観てみようと思って点けたNHKの藝術劇場。アンドラーシュ・シフという方の東京オペラシティのコンサートの録画放送とのことで観ていました。演目が、シューマンにベートーヴェンでした。これだったら値打ちあるかもと最後まで観ることになりました。
 アンドラーシュ・シフという方は、全然知りませんでしたが、インタビューで興味深いことをおっしゃっていました。「自分はバッハは永遠の課題だと思っている。そのあといろんな作曲家モーツァルト、バルトーク、シューマンその他の曲に挑戦してきた。ベートーヴェンについては、難解な曲が多いので、もっと成熟してから取り組もうと思ってきた。まだ不十分だと思うが、もうそろそろベートーヴェンに挑戦する時が来た。ベートーヴェンもシューマンもバッハに無縁ではない。聴いてもらえれば分かると思う。今朝もバッハの練習をしてきた。」

 そうなんだ。やっぱりベートーヴェンは難解なんだなあと思いつつ、それにしても若いピアニストが好んで弾いているベートーベンはどうなんだと思いながら、聴いていました。

演目は、
・シューマンの 『蝶々』op.2 ・ベートーヴェン ピアノソナタ第17番ニ短調op.31-2 『テンペスト』 ・シューマン 幻想曲ハ長調 op.17 ・ベートーヴェン ピアノソナタ第21番ハ長調 op.53 『ワルトシュタイン』

 でした。私はシューマンはほとんど知らないので、興味はベートーヴェンでした。まず、ピアノの音色がよく聴くスタインウェイ&サンとは違うようで、重々しいとくに低音部に特徴のあるピアノでした。あとで、調べてみるとベーゼンドルファーだということでした。大きな手が、かぶさるように、一音一音を分析し、かみ締めるような感じで弾いていました。たたくというより、やさしく包み込むといった弾き方でしたね。前にゲルハルト・オピッツの演奏を聴きましたが、それよりスローな調子で冷静な感じでした。
 アンドラーシュ・シフは自分の解釈で、ここに至ったのでしょうね。これは好き嫌いがあるかもしれません。私は。シフが穏やかないい表情をして弾いているので、もしかしたら、ベートーヴェンがこんなふうに弾いたのかもしれないなあと思いながら、見入っていました。

 驚いたのは、アンコールの様子です。前述のゲルハルト・オピッツの時は、手が痛くなるくらい拍手をしても、アンコールはなく、ただ出てきてはお辞儀をするだけだったのですが、なんと3曲も弾きました。(本番では4曲だったそうですが。)
 曲目は、
 ・バッハ フランス組曲 第五番BWV 816 ・シューベルト ハンガリーのメロディ ・シューマン アラベスク

 本番では、バッハのイタリア組曲も弾いたそうです。これは、休憩時間もあったでしょうから、コンサート2回分ですね。私は、さすが、バッハ弾き(これも後で分かったこと)だと思いました。フランス組曲が圧倒的に良かったです。軽やかで、お洒落な演奏でした。片言の日本語で曲の名前を言っていました。余談ですが、奥様はバイオリニストの塩川悠子さんなので、日本びいきなのかもしれません。それでとっておきの曲をアンコールで披露してくれたのかもしれません。放送が終わった時間は、次の日の午前1時でした。いい時間が過ごせました。



関連記事のリンク先
       
http://nailsweet.jugem.jp/?eid=84

http://blog.goo.ne.jp/charlotte26/e/857be9ad185df058d69e10499437f234


バッハ:フランス組曲(全曲)

バッハ:フランス組曲(全曲)

  • アーティスト: シフ(アンドラーシュ),バッハ
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1997/10/25
  • メディア: CD



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ちかごろ思い出した歌 [音楽]

ただ一度だけ

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 最近、頭から離れない歌があるのです。きっかけは高校の同窓会の連絡が来てからのことです。なぜだか、俄かにこの歌が思い起こされ、このところ口ずさむことが多いのです。

 それは、昔のミュージカル映画『会議は踊る』の主題歌、「ただ一度だけ」です。モノクロのドイツの映画です。映画そのものがはやったのは私の父母の時代ですが、私の思春期には主題歌のカバーがラジオで盛んに流れていました。たしか、ペギー葉山さんが歌っていたと思ったのですが、いまだに確証がつかめずです。映画の中では、リリアン・ハーベィが歌っています。



 原題は「Das gibt’s nur einmal」(ダス ギブツ ヌア アインマル) 
日本語訳では、たしか以下のようになっていたと思います。残念ながら、○○のところ、(   )のところは歌詞が思い出せません。とても気になるので、ツタヤへ行ってペギー葉山のCDを調べてもありません。

      ただ一度 二度とない
      うるわし 春の日
      思い出の 楽園地
      夢見る よろこび
      ただ一度 二度とない
      あわれ そは夢か
      春の日は ○○となり
      やがて すぐ消える

      (            )
      (            )

 DVDならただいま貸し出し中でしたが、あることはあるのです。でも、ドイツ語なので手に負えません。インターネットで調べてみると、加藤登紀子も歌っていることが分かり、早速iTunesで200円ナリで購入してみました。でも、歌詞が違うんです。お登紀さんが訳した詩だそうですが、なんか違和感を覚えました。もっと文学の香りが高いのです。だれか御存知ないですか~。

 映画そのものは、1814年のヨーロッパを舞台にしたロシア皇帝アレクサンドル1世とウィーン娘のはかない恋物語としてのミュージカルですが、欧州連合がナポレオンとの戦争に勝利して、事後処理をするためのウィーン会議をもじった題名です。第二次大戦前夜、ドイツでヒットラーが台頭する前の1931年代に作られていますが、33年ナチによって上映禁止とされています。ちなみに太平洋戦争に突入する前の日本でも公開され、『学徒出陣』した学生がドイツ語でこの歌ともう一つの主題歌を愛唱したそうです。オーストリアの将軍とフランス外相の「会議は踊る。されど進まず。」の名セリフだけが、現在でも残っていますが、映画の中味を知っている人は少なくなっているでしょうね。
 私は中学生か高校生の時に、この主題歌の日本語版から、映画の存在を知ったのです。恋多き年頃でしたので、よく口ずさんだものでした。

  今回の同窓会の案内が届いたときに、連動してタイムスリップし、「ただ一度だけ」の歌が思い起こされたのです。考えてみれば、単純そのものですね。



愛はすべてを赦す

愛はすべてを赦す

  • アーティスト: 加藤登紀子
  • 出版社/メーカー: ユニバーサルJ
  • 発売日: 2006/11/01
  • メディア: CD



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念願のスラヴァ [音楽]

初のスラヴァ体験

  前にシンフォニーホールに行ったとき切符を手に入れた、スラヴァのコンサートに行ってきました。実は題して『ボリス・ベレゾフスキーwith his friends スラヴァ&サヴェンコ』とあるように、ベレゾフスキーが中心だったのです。
  以前(1995年か)、スラヴァが来日して以来、熱烈スラヴァファンになりました。アルバムの『アベ・マリア』は幾度となく聴きました。
とくにカッチーニのアベ・マリア、シューベルトやグノーのそれとが大好きでした。

 この日の演目は、『ラフマニノフ&メトネルの夕べ』ということで、

ベレゾフスキー:ラフマニノフ 前奏曲 Op.32より 第1曲:ハ長調 第2曲:変ロ短調 第3曲:ホ長調 第5曲:ト長調 第7曲:ヘ長調 第8曲:イ短調 第11曲:ロ長調
サヴェンコ(バス・バリトン):メトネル 7つのロマンス メトネル 6つのロマンス メトネル 6つのおとぎ話
スラヴァ(カウンターテナー):ラフマニノフ ヴォカリーズ Op.34-14 メトネル ばら Op.29-6  まだ萎れていないばら Op.36-3 ラフマニノフ リラの花 Op.21-5

 で、私はスラヴァが、これまた大好きな『ヴォカリーズ』を歌うものと思っていましたが、変更がありました。
変更があったのは、スラヴァの上の三曲が、チャイコフスキーの『夜』『また前のように、ただひとり』『あこがれを知る者のみわが愛を知る』と差し替えになり、『ヴォカリーズ』は歌わず、ベレゾフスキーのピアノ演奏で弾かれることになりました。
そして、後半にスラヴァはラフマニノフの3つのロマンス『夜は悲しい』『リラの花』『真鶸の死によせて』を歌いました。

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  上は、スラヴァの『ララ・バイ』、『アベ・マリア』は貸し出し中です

 ベレゾフスキーは、1990年のチャイコフスキーコンクールの優勝者でそれから18年が経ってますが、大きな体をして、ピアノをおおいつくすように弾いていましたっけ。パンフレットに「大地を揺るがすピアノ」と形容してありましたが、その通りでした。もちろん、技巧的にも素晴らしく速い曲も『ヴォカリーズ』のようにゆっくりしっとりした曲も絶妙に弾いていました。

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  ベレゾフスキーのCD、この日の演目が入っていましたので、ゲット 

 サヴェンコのバリトンの声も素晴らしく、野太い深みを帯びた歌いっぷりは、たしかにロシアの大地の底から湧いてきたようでした。
 しかし、やはりスラヴァです。細身の長身の哀愁を帯びた顔、ちょっと中性的な身のこなしはオーラを感じました。CDのプロフィールに彼の声はビロードのような質感を持っていると書いていましたが、本当に不思議な声なのです。ホールのスミズミまでが震えるように共鳴して、なんとも心地よい音の響きに包まれました。こんな声を持った人はどこにもいません。唯一無二であり、不世出の人であると思います。女の人のソプラノは、甲高いけたたましさを感じるのみで、あまり興味がない(フィリッパ・ジョルダーノは別)のだけど、スラヴァの声には、参ってしまいます。『憂い』『無常観』を感じてしまいます。

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 アンコールでベレゾフスキーが出て演奏し、サヴェンコが歌唱し、いよいよスラヴァが出るかもという時、私は思い切って 「スラヴァー」と叫んでしまいました。こんなことは初めてです。でも、声を出さないと一生の悔いになるような気がして叫んだのでした。はあーっ、満足。

 
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ブラームス 交響曲 第1番 [音楽]

大阪センチュリー交響楽団の定期演奏会

  2月21日に、友だちとクラシックコンサートに行ってきました。大阪センチュリー交響楽団は、大阪にある四つの交響楽団のうちの一つです。大フィルは以前にもよく聴いたことがあるのですが、センチュリーは初めてです。それにブラームスの交響曲第1番も初めて聴くので、期待して行きました。ただ、ちょっと気になるのは、風邪が十分に治っていないので、咳が出たらどうしようということでした。

      

   今夜の128回目の定期演奏会の演目は、○ ベートーベン:バイオリン、チェロとピアノのための三重協奏曲 ハ長調 作品56 指揮 小泉和裕  バイオリン 川崎洋介  チェロ ヴォルフラム・ケッセル ピアノ ヴァディム・セレブリャーニー 大阪センチュリー交響楽団 ○ J.ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 作品68 指揮 小泉和裕  大阪センチュリー交響楽団 

場所はシンフォニーホール、席は二階のLFの2番。斜め上から見下ろせる場所でした。最初のベートーベンは、あまり聞き覚えのない協奏曲でした。軽やかな感じのバロック色の濃い曲でした。ベートーベン34歳に完成したコンチェルトで、この頃はもうはやらなくなった形式のものだそうです。正直、あまりベートーベンらしくないので(たぶんに偏見があるのかもしれませんが)、あまり熱心に聴いていませんでした。テンポが速いので、ゲストのピアニストのヴァディム・セレブリャーニーが忙しく譜面をめくっていらっしゃいました。うまくめくれなかったらどうするのだろうと変な興味をもって見ていました。

  次のブラームスは、友だちのおすすめでもあったので、しっかり聴いていました。第1楽章からティンパニーが厳かに打たれます。かなりドラマティックな導入部分が過ぎると、しめやかに物語が始まります。なかなか重厚な曲想が続きます。なんだか不安に陥れられるような部分もありました。第1楽章が終わったところで、ゴホンゴホンと咳の嵐。クラシックのコンサートならではの笑える場面。私も負けじとゴホゴホ。2楽章、3楽章は一転して明るい軽やかな変化をとげます。そして、3楽章が終わって、さあ咳をしようと思ったら、いきなり4楽章が始まっちゃいました。まさに息も継がせずといった観がしないでもないが、たぶん指揮者にしてみたら、これが絶好のタイミングだったのでしょう。第4楽章は圧巻でした。ベートーベン好きの私ですので、いたるところに思い当たるフレーズがあるのです。或る人は、第九を思わせるようなと言っていますが、第五の交響曲にも重なるようなメロディーも聴き取れました。もちろんブラームスのオリジナル部分の素晴らしいところもたくさんあるのですが、私は金管楽器が掛け合いで主題の変化を奏でるところが気に入って、終わってからももう一度聴きたいと思いました。
  ブラームスは、ベートーベンを敬愛してやまなかったといいます。あんなすごい個性をもった音楽家のすぐ近くで、活動していた人なのですから、影響を受けて当たり前。そして、この第1交響曲を完成させるまでになんと20年もかかったそうですから、20年間ベートーベンにとり付かれていたことになるのかなあ。でも、この曲はいろいろな要素がいっぱいつまっているそうです。

  次の日、オーケストラ・アンサンブル・金沢の「ブラームス第1交響曲」金聖響指揮のCDを買っちゃいました。当分、何回も聴いてどこがどうなっているのか勉強?します。

  あっそれと、シンフォニーホールに行ったついでに、「スラヴァ&サヴェンコ:ボリス・ベレゾフスキーwith his friend」の切符を買ってしまいました。スラヴァは10年ほど前にブレイクしたときからのファンなんです。あのミステリアスな歌声がたまりません。それに私の好きな『ヴォカリーズ』も歌うようですから。 
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昨日はおとなしく家で・・・ [音楽]

日を間違えていました

  先日から、玄関のドアのばねが壊れて、垂れ下がり状態でした。鍵はかかるので、そのままにしていたのですが、なんとも落ち着かないので、ビル管理会社の方にロックサービスの方を紹介していただきました。マンションの玄関のドアの表は共用部分になるので、あまりいじることができないので、その方がよかったみたいです。昨日は、直してくださる方が来られる日でした。

  しかし、11時になっても来られません。約束の時間を1時間も過ぎています。電話で聞いてみようかしらと思っていたところ、カレンダーが眼に入りました。なんと、日を間違えていたのです。6日(水)ではなく7日(木)のところに印をつけていました。来ないはずだよなと思いながら、その日は何して過ごそうかしらと考えました。

  私は今年度から、土日の他に、水木とお休みをとっているのです。もう若くないし、時間の方がお金より大事に思うようになってきたからです。そこで、NHKのグッズセンターから送ってもらった半襟のビーズ刺繍をして一日を過ごすことに決めました。

  テレビを消し、CDを聴きながら刺繍をすることにしました。なんとも贅沢な時間の過ごし方とは思いませんか。CDは、まずテルミンのユニットの『マコフェイ』の「タイドトリップ」に決めました。『マコフェイ』とは、作曲家の白川真琴のマコとボーカルとテルミン奏者のフェイターンのフェイをくっつけた名前なんです。けだるい音楽が流れます。しかし、なぜか母親のお腹の中にいるような安らぎが感じられます。はじめのワルツのあと、<月夜の潜水艦>という曲、

  ・・・静かに流れる夜のビリジアンブルー
    浮かび上がる船に乗り
    
    天球図をかかえ天の河を渡る
    三日月を食べるレプトレピス

    夜をかきわけてマエニススム
    光を集めてキミニアゲルヨ

    夢見る三葉虫
    弧を描き潜る潜水艦

    僕らを飲み込んで
    どこまでも潜る潜水艦

    いつまでも
    どこまでも
    深く潜る潜水艦

上の二人の作詞です。これが、深海さながらの電子音でかなでられるのです。そして、心臓音のようなパーカッションの鼓動。その他、<チャイトーヨ>なんだか、沖縄とインドネシアと宇宙が融合したような音楽です。ライブではフェイターンがテルミンを演奏しながら、歌い、巫女のように神がかり的に踊っていました。(<チャイトーヨ>はyou tubeとリンクしてます)


    

 次に聴いたのは、アマゾンのバンダレコードで手に入れた、マウロ・パガーニのCDです。題して『MAURO PAGANI』。この中に<ヨーロッパのあけぼの>って曲があるのですが、これも、前にテルミンユニットの『and more・・・』が演奏した曲で、もう一度どうしても聴きたかったので、捜して手に入れたのです。(『and more・・』にもリンクを貼っています)
  マウロ・パガーニはイタリアのプレシア地方で生まれたのですが、少年時代にバイオリンを習い、ロックやブルースの洗礼を受け、イタリアを代表する『Premiate Forneria Marconi』(PFM)というバンドにいたそうですが、数年でソロに転向し、みずからのルーツを探求すべく、地中海民族音楽の研究をし、発表したのがこのアルバムだそうです。
  解説を読む前から、ヨーロッパというより、イスラムやロマの音楽のようだと思っていました。使っている楽器も、非常に民族性のある土着的な音がします。解説を見ると、当初考えられた題が『ランゴバルトとサラセン』という題だったそうですから、私の音感も、当たらずとも遠からずでしょう。そして、楽器はバイオリン、フルート、プズーキ(ギリシャの民族楽器・弦楽器)、尺八の音色を思わせる木管楽器、アフリカ的な太鼓などを使っています。全編、アラベスク模様のような摩訶不思議な美しさにあふれています。しかも、懐かしいよな憂愁に満ちているので、理解したいという欲求に駆られるような音楽です。

     

 ビーズ刺繍はどうなった?はい、まだまだ時間がかかります。いやー楽しかったです。なんだか音楽を聴くことに重点がいってしまったみたいで。人生寄り道ばかり、まっすぐな道はあまり好きではありません。

マウロ・パガーニ~地中海の伝説(紙ジャケット仕様)

マウロ・パガーニ~地中海の伝説(紙ジャケット仕様)

  • アーティスト: マウロ・パガーニ
  • 出版社/メーカー: ディスク・ユニオン
  • 発売日: 2004/11/19
  • メディア: CD


真夏の夜の夢(紙ジャケット仕様)

真夏の夜の夢(紙ジャケット仕様)

  • アーティスト: マウロ・パガーニ
  • 出版社/メーカー: ディスク・ユニオン
  • 発売日: 2007/02/23
  • メディア: CD






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ウキウキテルミンコンサート [音楽]

久しぶり~なアングラ気分

  12月22日土曜日、テルミン奏者6グループのミニコンサート『スナック電波 1』に行ってきました。厳密には、テルミン5グループ、のこぎり奏者1名です。地図をたよりに、難波のなんばシティー沿いの道を南へ南へとしょぼふる雨に傘をさして・・・まず地図にのっていた難波ロケットが目につきました。あやし~いたたずまいの入り口に、大学生らしき人たちが受付をしていました。ここは、娘に聞くと、待ち合わせやいろんな情報を提供してくれるところらしいのですが、まあ一昔前のゲリラ的な雰囲気。お手洗いがあったので、入らせてもらいましたが、中は良識がちゃんと守られていて、清潔感がありました。

 

 そこから少し行って、曲がったところに会場になっている『CLAB SAOMAI』がありました。いかにも、場末って感じで、ときどき上を電車が走るのです。たぶん、シャバ代が安くつくからなんだろうなと思いながら、中に入りました。

カウンターでお姉さんが、予約客の紙切れを見て、私の名前をさがしてくれるのですが、ありません。そこへ、予約をお願いしたはずの我が師匠が、通りかかり、難なく予約の代金で入れることに。
ワンドリンクがサービスで付いていました。隣の小部屋でもう始まっているのですが、超満員で入れません。カウンターの席に腰掛けて、耳をしっかり働かせることに。
 この日の出演者は、

クリテツさん  東京のストリートアーチスト制度の「ヘブンアーチスト」のライセンスを取得されているとか。大阪へは年に二度来られているとかのテルミン奏者かやまてっぺーさん  ベーシストでいろんなバンドとセッションしています。村上カマさん テルミン二人組、DeepSpekuterとして活動していましたが、かたわれが東京へ行ってしまったとか。ちょっぴりさびしげな感じが音にも出ていました。Andore     あんどうれいこさん のこぎり奏者です。たいへんきれいな音を聞かせてくれました。マコフェイ、 カーツウェルを操る白川真琴さんと歌って踊ってテルミンを弾くフェイターンさんのユニット。これにドラム奏者の方とさきほどのてっぺーさんがベースをやっていました。マコフェイについては、のちほど。and more・・・・  いきあたりばったりで名前が決まってしまったテルミンのユニット。菊池さんという昔少年と我が師匠がコンビを組んでいますが、その日によって友情出演が。その人数はand moreのあとの・・で決まるそうです。この日は、ベースのてっぺーさんとカーツウェルの真琴さんが入って4人だから・・・・

 のこぎりのアンドレさんには、やる気を感じました。聞けば御両親が音楽家ですって。だから、生半可なことはされない。この日は、クリスマスソングをゆったりたっぷりと、のこぎりの音で奏でてくれました。テルミンに似たきれいな音でしたが、つねにビブラートしてるところがちょっと違うのかな?クリテツさんのは聞けず。カマさんのは、ちょっと切ない。そして、マコフェイには度肝を抜かれました。歌って、踊って、テルミンを弾いて、こんな自由奔放なアバンギャルドな奏者は、初めてです。引力抜群で、わたしは夢中になって観ていました。なにより、音楽を楽しんで、体で演奏しているのがいい。踊っているのは、電波の影響のないところで、いきなりヒューンとテルミンが宇宙的に入ってきます。あんまり良かったのでアルバムを買いました。終わってから、フェイターンに「CD、買ったで。」というと、喜んでくれて二回も握手してくれました。



いよいよ、最後は我が師匠のand more・・・・の出番。菊池さんが、「電車が通ったら、行くよ~。」と言って始まりました。いつものスローバラードで入って、三曲目に「ヨーロッパの夜」というんだったかな?ノリノリのジャズでした。もう少し会場が広かったら、みなさん踊ったでしょうに。クリテツさんも入り、マコフェイのメンバーも入って最後の演奏となりました。 

 いい感じで終わったので、帰り道もルンルン気分でした。街を良く見れば日本橋の、電気屋さんが多いところに近い。なるほど、それでテルミンが集結したわけだ。ロケット広場の方でも、桃大の軽音楽部のコンサートが終わったようでありました。久しぶりにアングラな気分を味わってきました。ガンバレ若者たち。

CLUB SAOMAI

  


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グレン・グールドの記憶 [音楽]

テアトル梅田に走る!

  ドキュメンタリー映画『グレン・グールド 27歳』を観るために、走りました。午前10時20分開始、一日にこの一回限り。
テアトル梅田の場所を、もっと近場と思い込んでいて、朝インターネットで調べると、茶屋町のLoftの地下なので、大慌てで家を出ました。これなら、洗濯物を干さずに行けばよかったと駅に着くと、9時25分の電車が行ったところ。梅田に着いたのは、10時13分。またまた、人を掻き分けて走りました。心臓がもうバクバクいっていました。死んでも観てやるというわけで、地下にある映画館に入ってみると、「今、予告編が始まったところだから、入れますよ。」ということで、あやうくセーフでした。



 私がグレン・グールドを知ったのは、もう遠い昔のこと。なにが、きっかけだったか忘れましたが、まず、「リトル・バッハ・ブック」のCDを手に入れました。それから、図書館でグールドの本に出会い、ずいぶん孤独で特異な存在の人だなあと思ったものです。でも、バッハの切れ味のいい音が忘れられず、ビデオの「グレン・グールドの32章」を観たり、他のCDを捜したりしたものです。まあ、ごたくを並べずに観たあとの感想を述べてみます。

 前編・後編で60分ほどのドキュメンタリー映画(記録映画とはちょっと違う。なぜなら、カナダ国立映画製作庁=NFBの製作意図による編集が行われている)であるが、実によく出来ていた。グールドが一番輝いていたころの、生き生きとした躍動感に満ちていました。最初、ニューヨークにあるスタインウェイの店内に入るグールドのいでたちは、夏なのに帽子、マフラー、コートを着込み、愛用の折りたたみ椅子を持っている。そして、そこらじゅうのピアノの中から、これから弾こうとする曲にマッチする理想的なタッチと音色を持つピアノを選んでいる。しかし、椅子を特注するのは、ホフマンや他の音楽家もすでにいたようだ。
 グールドは、演奏会をきらい、録音活動に自分のスタイルを求めている。グールド自身の言葉を借りると、「もともと人ごみが苦手で、大ホールでは閉所恐怖症になる。ただ、舞台の上では大丈夫だけど。」と言っている。また、舞台の上でのマナーをとやかく言われるのが、いやだったようだ。その点、スタジオでは、自由気ままにできる。シャツをはみ出させて、靴下でうろうろしているグールドを見て、録音のプロデューサーが『はだしのバッハが来るぞ。』などと、ジョークを言っていた。田舎でのんびり暮らしていたグールドにとっては、演奏旅行などで二日か三日おきにコンサートをこなすような生活は異常だと思っていたようです。トロントの郊外のアプターグローヴの別荘でのグールドはリラックスし、愛犬のバンコーと森を散歩したり、友人と語らったりして、まことに優雅で孤独な生活をしている。そして、ピアノに向かっているグールドは、得意のハミングをしながら、(録音時は、関係者にとってなやみの種だったようです)ときには、指揮者のように空いている右手を空中に躍らせながら、まるで性欲も物欲もいっさいを演奏の中につぎ込んでいるかのように見えました。
 この映画に収録されている演奏は、おもにバッハのイタリア協奏曲、パルティータ第二番、フーガの技法、シューベルト交響曲第五番、モーツァルトピアノ交響曲第17番が少しずつ。ドビュッシーの月の光は揶揄的にアレンジして弾いていました。だれかがグールドはドビュッシーがあまり好きではなかったと書いていました。
 60分間、過不足なしのありのままの凝縮されたグールドの世界でした。カナダの荒涼とした原野が培ったグールドの感性や人間性を余すところなく、さらに深まるなぞを残して映画は終わりました。親しい人に久しぶりに会えたような気がしました。

<その後のグールド>
 グールドが32歳の頃から、スタジオ録音のみを活動の場とする隠遁生活に入り、あらたな次元を迎える。翌年からは、ストコフスキーとの共演で、ベートーベンのピアノ協奏曲第5番を録音している。(ぜひとも聴きたいものだ。)そして、ラジオドキュメンタリーや映画の音楽担当をした後、手の障害を引き起こす。46歳で復活し、録音活動再開。おもしろいことに、夏目漱石の『草枕』を朗読したりしている。そして、50歳の9月に脳卒中で倒れ、10月に没する。

  

 うちにあるグールドのCDです。3枚のうち1枚は行方不明中です。『リトル・バッハ・ブック』はおそらく何十回と聴いたからでしょうが、非常に傷ついていました。にもかかわらず、グールドのお得意のハミングは鮮明に残っていました。映画館で買ったプレスと称したパンフの記事の中に朝比奈隆さんが書いた文章が載っていました。ローマのサンタチェチリア・オーケストラの定期演奏会で共演されたようで、とてもいい名文です。紹介したかったのですが、時間切れ。また、なにかの折に紹介します。

グレン・グールドとの対話

グレン・グールドとの対話


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