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N響コンサートの日だった (続き) [音楽]

ブラボーな演奏

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 さて、いよいよ演奏が始まった。前の日も寝不足だったので、早めに席に座って、少しまどろむことにした。だから、オーケストラが全員座ったことは知らなかった。

 指揮者のジェームズ・ジャッド氏(英)が入場してきたので、目が覚めた。私が前もって眠るのは、かんじんの演奏でばっちり聴いていたいからだ。
 1曲目はドヴォルザークの『序曲「謝肉祭」作品92』、短いが陽気な作品だった。指揮者のジャッド氏は、手首がやわらかい繊細な動作で指揮をとっておられた。

 いよいよ2曲目のモーツァルト『ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 k.467』である。ピアノ協奏曲というのは、3楽章からなるものが多い。モーツァルトは、17曲ものピアノ協奏曲を書いている。フリーの音楽家になったモーツァルトは、演奏会でみずからがピアニストとして演奏し、作曲で力を発揮すると同時に、演奏の腕も披露した。何より、演奏会での資金調達が重要だっただろう。今回のピアニストはジョナサン・ビス氏。手足の長い若手のアメリカのピアニストだった。
 第1楽章では、モーツァルトらしい明るくテンポの速い曲調で、終わりごろでは交響曲第41番(?)を思わせるようなフレーズが二度ほど出てくる。
 待望の第2楽章。まずオーケストラで主題部分が演奏される。バイオリン、ヴィオラのなんという繊細な音であろうか。プログラムを読むと弱音器というのが取り付けてあったそうだが。そのあと同じ主題をピアノがデリケートに語り始める。モーツァルトのころはたぶんチェンバロ風な音がしたんだろうなと思いながら、スタインウエイ&サンの音色に耳を澄ます。バイオリン・ヴィオラ、チェロ、コントラバスのすべての弦楽器がピチカート(つま弾き)奏法で後押しをする。映画の『みじかくも美しく燃え』にこの第2楽章が、使われたのだそうだが、テーマの冒頭の複付点四分音符がやさしくやさしく入っていく。くり返す主題が、まるでボレロの時のように盛り上がっていく。バックのピチカートがよけいに、行け行けと命令する。なんともいえない恍惚感が満たしていき、クラシックの醍醐味に酔いしれる。ゆっくりしたリズムと甘美なメロディーの結婚のようだ。
 第3楽章は、モーツァルト持ち前の早いテンポの軽快な音楽となって、しめくくる。まだ第2楽章の余韻を残したまま。



三曲目はブラームス

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N響コンサートの日だった [音楽]

当日券をゲット!!

 18日、朝から友だちにメールをもらった。旅行先からだった。私もその日は、職場の親睦旅行だったのだが、理由がいくつかあってパスした。朝から早起きして、ピアノ(へたの横好きであるが)を弾いたり、クラシックを聞きながら編み物をしたりしていた。夏になると、レース編みがしたくなって、今は文庫本のカバーを編んでいる。

 しかし、いいなあ。今ごろ、バスに揺られてお昼ご飯かなあ。
すると、お昼ころ、またメールが来た。「ビール工場に来ていて、ドライと黒ビール飲んでいます。あなたは編み物がんばって。」だって。

 私はそのあと、急に思い出したことがあった。なぜ、親睦旅行に行くのが気がすすまなかったのか。その理由の1つが、その日は、シンフォニーホールでN響のコンサートがある日だった。前売りのチケットが完売だったので、あきらめていた。そのときのNHKサービスセンターの電話の回答で、当日券という手があるのを聞いた。もう一度電話で聞くと、午後二時から会場の窓口で販売されるということだった。そのときまだ12時過ぎだったから、間に合う時間帯だった。お昼ごはんはまだだけど、まず行ってからなんとでもなる。

 私は、JR環状線の福島に飛んだ。シンフォニーホールの窓口に着いたのが、二時五分だった。A席とS席が残っていたが、いい方を買ってしまった。これは、後で気付くのだが、前の方だからといって、いい席とは限らなかった。

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 なぜ、そのコンサートに行きたかったのか。それは、モーツアルトの『ピアノ協奏曲第21番ハ長調 k467』が演奏されるからだ。今の私の最高のお気に入りで、下手なピアノででもこれを練習しているし、今朝もCDで聴いたばかりだ。だから、ダメもとで、当日券を求めたわけだ。

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 N響の生演奏は、初めて聴くのでどきどきする。長くなりそうなので、今回はここまで。
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洋館で音の古今東西 [音楽]

旧グッゲンハイム邸でのコンサート

 29日は、テルミンの先生にコンサートの案内をいただいていましたので、聴きに(観に)行ってきました。
まず、会場になったのは、神戸市垂水区塩屋町にある旧グッゲンハイム邸でありました。地図を忘れてしまって、反対方向に行ってしまいましたが、午後4時の開始時間には間に合いました。

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 ここ旧グッゲンハイム邸は、その名の通りドイツの貿易商であったグッゲンハイムさん一家が明治から大正にかけて6年間住まわれたという洋館で約100年が経つそうです。取り壊しや転売の憂き目をかいくぐって、今はイベントスペースになっているそうです。

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 今回一堂に会した楽器は、20世紀前半に発明されたものたちばかり。もう決して新しいとは言えない楽器の演奏に海をのぞむ旧グッゲンハイム邸は、レトロ感たっぷりのもってこいの場所でした。

 演奏された楽器を順番に紹介しますと、まずテルミンですね。私の先生が構成している『アンド・モア・・』の演奏から始まりました。もう一人の方はテルミンとエレキギターを操られます。
 二番目は、日本の古典楽器である筝と尺八の演奏でした。ただし、筝は13弦は古典楽器ですが、17弦の筝は、20世紀前半に造られたもので、大きな琴柱と低いベースのような音が印象的でした。尺八は前からいいなと思っていましたが、あのすさぶような音はまことにアナログな人間しか出せない音がします。竹に穴が数個空いただけの簡単な楽器から、得も言われぬ精神的な音がするのには、改めて感心してしまいます。

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 そのあと、二つのヴィオラ・ダ・ガンバによる演奏。チェロよりも少し小ぶりな弦楽器には6本の弦にギターのようなフレット(?埋め込んだ金属の横棒)が付いています。これはもう少し古いもので、16Cに生まれた楽器でバッハが亡くなった後には、ほとんど姿を消してしまったという楽器で、脈々と受け継がれている貴重なものでした。

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 そして15分の休憩に入って、その後は二階に移動となり、梅田哲也さんによるライブインスタレーショ。針金が縦横に引いてあり、それにコイル状のものがぶら下げてありました。針金の一方はドアのノブに括り付けられ、もう一方は土管のようなものにコイル状になって差し込まれていました。どこかに電源とスピーカーがあるのか、針金がドアの開閉にともなって、微妙に音が変化し、ぶら下がっているコイルの端に付けられた、トライアングルをたたく時に使う金属棒のようなものが鳴り響く。かなり前衛的な音楽で、偶然のもたらす効果が面白かったです。やがて、モーターのように回転するものが組み込まれ、ヒューンヒューンという音が混じりあっていました。

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 次は、オンド・マルトノ。フランス人のモーリス・マルトノという人が1928年に考案した楽器で、テルミンを鍵盤にで制御したような音を出す楽器です。また、出力する場所が3つあり、それぞれ違う音色が出るようになっていました。テルミンは音階や音の大小を全部演奏者がするので、電子楽器のなかでもアナログな方ですが、オンド・マルトノというのは、かなりシステム化されているなと思いました。池辺晋一郎さんが作曲された『熱伝導率』という曲と『月の年齢』という曲が演奏されました。

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 そして、最後に尺八とヴィオラ・ダ・ガンバをのぞくすべての楽器で、『ヨーロッパの曙』という曲が演奏されました。終わったのは、八時近くになっていました。
 少々長いコンサートになりましたが、風光明媚な場所で、レトロな気分に浸って、いい時間がたっぷりと過ごせました。
 

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シーズネットのこと [音楽]

登紀子倶楽部シーズネットのこと

<いきさつ> 
 じつは、私のブログを見ていただいたある方の依頼で、昨年の記事『加藤登紀子コンサート』http://kimonodaisuki.blog.so-net.ne.jp/2008-10-02#favoriteを、シーズネットの機関紙に載せることになりました。思いがけないのとブログがもつグローバルな力に驚いて、半信半疑な気持ちが交錯していましたが、今週初めにでき上がった機関紙が本当に届いたのです。一冊目には、登紀子さんのサインが書いてありました。私の名前まで書いてくれていたのです。

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『シーズネット』というのは、加藤登紀子のファン倶楽部の一つのようで、トキコ・プランニングの中にある組織のようでした。書き込みをいただいた編集者の方がいい方のようで(文は人なりといいますが)、載せていただくのを快諾した次第です。送っていただいた冊子を読んで、他の方の文章が上手いのと中味が濃いのに比べ、自分の文がなんと当たり障りのないことよと恥じました。『シーズネット』の機関紙の質はかなり高いようで、おトキさんファンならずとも楽しめる冊子だなと思いました。その中で一つの記事が眼にとまったので、それについて私なりの感想というか、思ったことを書いてみます。

<マキと登紀子、ふたりの女の唄>
 この記事を書かれた方は、(まこりん)さん。まこりんさんは、加藤登紀子のライバルは浅川マキではなかろうかと言われる。私にとっては、かなり意外性があった。今まで加藤登紀子のライバルは高橋真梨子かなと思っていたぐらいで、浅川マキは知る人ぞ知るといったかなりマイナーな人のように思っていた。共通点といえば、二人とも学生運動華やかな頃に、学生たちの女神のように熱狂的な支持を受けておられた。その頃を思い出せば、私は大学三年生で南大阪に小さい部屋を借りて自炊をしていた。駅前にジュークボックスのある喫茶店があり、大学からの帰りにそこに寄って、浅川マキの『かもめ』を聴きながら、ヴォーグの雑誌をめくるのを楽しみにしていた。それ以来、浅川マキの大ファンになった。『夜が明けたら』や『裏窓』『赤い橋』などのレコードを買ったのは、働きだしてからのことである。職場のバンドをバックに『それはスポットライトではない』(これは、マキがカバーしていたロッドスチュアートの歌)を歌ったりもしたことがある。いつだったか20年くらい前に、某デパートの劇場に来て、初めて本物を観て感激し、2万円だったか3万円だったか浅川マキ全曲入りのCDセットを買って帰った。人が知らないといえばよけいに浅川マキに執着する私だった。
 かたや、加藤登紀子。その頃全共闘出身の藤本さんとのロマンスをよく耳にしていたが、『独り寝の子守唄』が大ヒットし、若手有名歌手に名を連ねた。が、その歌はそれほど好きではなかった。『知床旅情』も『琵琶湖就航の歌』もそれほど心を動かさなかった。マスメディアに乗った歌には、あまり興味がなかった。興味が湧いてきたのは、『灰色の瞳』の辺りだろうか。シャンソン歌手でありながら、南米のフォルクロ―レなども紹介したり、行動範囲が広い人だなと思うようになった。『百万本のバラ』も、『かもめ』がもつ匂いを持っていたためか、ともに私の愛唱歌となった。そして、登紀子が決定的に身近に感じられたというか、共感を持ったのが、2002年の夏。私のつれあいが亡くなった日の四日前の7月30日(だったと思う)に登紀子さんのだんな様が亡くなられた。登紀子さんは、半年後に藤本さんの本を出版された。私もつれあいの遺稿集を出したが、3年かかった。行動力という点では超人的な力を持った方で、お手本としたい人だと思ったのが、そのころであった。だから私にとっては、ライバルという言葉よりも、自分に影響を与えてくれた二人というのが正解なのかもしれない。
 まこりんさんの記事には、かなり刺激された。「二人はお互いにとって最も近く、最も遠い歌手!」本当にそうかもしれない。付け加えて、二人は強烈な個性を持ち続けている歌手なのかもしれないし、永続的にオリジナリティーを求めているのかもしれない。また、長谷川きよしという歌手についても、二人はそれぞれに活動をともにしているという記事もあったが、なるほど、個性と個性のぶつかり合いが、貴重な作品を生み出すのだなと思った。
 「連帯を求めて、孤立を恐れず」という言葉がよみがえる私でした。 

 最後に、4月9日に二上山から降りるとき、名残りが惜しくて桜を仰ぎ見た写真です。

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SONGS うたが街に流れていた

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: UNIVERSAL INTERNATIONAL(P)(M)
  • 発売日: 2008/05/07
  • メディア: CD



黒い空間~大晦日公演 文芸坐ル・ピリエ1992

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1994/12/21
  • メディア: CD



40年。まだこれがベストではない。長谷川きよしライヴ・レコーディング。

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 2008/10/01
  • メディア: CD



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名曲探偵アマデウス [音楽]

マーラー交響曲第5番

 日曜日の晩は、テレビ付けになってしまいました。
まず、8時からの大河ドラマ。私は藤沢周平の『密謀』を読んでから、直江兼続のファンでしたが、当時はあまり派手な印象は受けませんでした。妻夫木君の兼続は可愛いという他ありませんが、楽しみにしています。
そのあと、NHKスペシャルを見るときもあります。『男と女』3回シリーズも良かったです。ただし、二回目を見逃しましたが。そのあと午後11時までは、片付けやらお風呂タイム。午後11時から『名曲探偵アマデウス』が始まるのです。
 筧利夫さんの天出臼夫(探偵)と黒川芽以さんの響カノン(助手)の事務所に、いろんな謎を持ち込んでくる依頼者が来るのです。

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 先週の事件は、ピザ配達人兼企業スパイ(野間口徹)が持ち込んだ“新薬”の効能をマーラーの交響曲第五番から解き明かすというものでした。マーラーの交響曲第五番は、あのルキノ・ビスコンティ監督の名画『ベニスに死す』のテーマに使われた曲です。私は、その映画とその曲が大・大・大好きで、ビデオフィルムも持っているし、CDも持っています。なぜあのように心がかき乱されるのだろうという謎が私にはあったわけで、『名曲探偵アマデウス』は懇切丁寧に謎解きをやってくれたのです。
 とりわけ第五番の第四楽章が気に入っているのですが、ハープとヴァイオリンによって静かに静かに展開していきます。私には、ベニスの浜辺がズームアップで広がっていきます。ダーク・ボガード扮するアッシェンバッハが、伝染病の蔓延で封鎖されたホテルの浜辺で遊ぶ美しい少年タージオ(ビヨルン・アンドルセン)を見ながら、静かに息を引き取る場面です。まさに名曲と名画の最高の結合と思わせる場面でした。

 なぜに第四楽章が、心をかき乱し魅了するか。あるていどの解明がありました。それは、『倚和音』(いわおん)と呼ばれる不協和音の一つが駆使されていて、美しいメロディの中で不安感に悩まされるという仕組みになっていること。それから、テンポが一定ではなく、速さが要求されるところがあったり、思い切りゆっくり演奏するところがあったりするのです。また、ポルタメントな音として、なだらかに上昇していく音が一瞬引き返すような装飾音が付け加えられています。それらが、只者ではない音を紡いでいくのです。最後は愛が死へと昇華していく様子が表されているといいます。マーラーが渾身を込めて作曲したこの交響曲は、当時の世紀末ウィーンの背景が色濃く反映されているらしいのですが、若い婦人アルマとの恋があり、アルマに捧げる曲でもあったようです。ウィーンの宮廷音楽監督でもあり、ウィーン・フィルの総指揮者でもあったマーラーは、多忙に多忙を重ねついに倒れてしまいますが、このアルマの力を借りてこの交響曲を完成させるのです。私は、アルマの写真を見て一瞬、グスタフ・クリムトの恋人エミーリエ・フレーゲによく似ているなと思いました。この頃爛熟したウィーンの美の到達点なのでしょうか。

 とにかく『名曲探偵アマデウス』は、いい曲を扱ってくれています。ショパンの24の前奏曲の中で一番好きな『ホ短調op.28-4』もそうでした。なぜ心惹かれるのかを解き明かしてくれたのです。知らない曲は、何度もさわりを演奏してくれるので、親しみがもてるようになります。長続きしてほしい番組の一つになりました。



 
マーラー:交響曲第5番

マーラー:交響曲第5番

  • アーティスト: グスタフ・マーラー
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2009/03/18
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ベニスに死す [DVD]

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フレンズ オブ テルミン 練習発表会 [音楽]

素敵な場所で、すてきな音楽を


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 御堂筋の銀杏並木が黄金色にかがやくあたりを越えて、堺筋のほうへ歩いていくと、大阪綿業会館がありました。
こちらの建物は、国指定重要文化財であるとか。なるほど重厚な作りの古風なビルで、入り口は鉄の装飾模様がいかめしくも美しいです。大阪が昭和の初め、「東洋のマンチェスター」と言われ、綿工業で、世界一を誇っていた頃に、大阪城の数倍の建築費で建てられたビルだということです。現在も会員制で使用されていますが、こういうイベントなどでは貸し出しされているようです。

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ロビーに入ると、まぶしいシャンデリアに二階へ続く階段が両側からのびていました。ロビーには絨毯、階段には赤い敷物が。中央には、でんと実業家らしき人の彫刻の像。おそらくこのビル建設に功労のあった方なのでしょう。

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 今日は、この古くもゆかしい建物の中で、これまたロマンあふれる最古の電子楽器テルミンの練習発表会がありました。私が習っているK先生もフレンズ・オブ・テルミンのお仲間なので、出演されます。
レパートリーは、そろいもそろってマニアックな曲ばかりです。たとえばこういうのがあります。

 ・STAR TREK -original TV version/Alexander courage
 ・カンタータ156番より「我が片足すでに墓穴に入りぬ」/J.S.バッハ
 ・leiteland/演奏者作曲
 ・A Little Gift for Lyuba/青木朋子
 ・かけつけ一曲/作曲者不詳
 
 他、いろいろ。

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 計十七名の方の演奏がありました。どの方もテルミン暦は長く、そうかといって経験年数に比例するものでもないのですが、すごくうまい人が多かったです。K先生は、今年の夏(?)ノルウェーに行かれた時に、滞在されたleitelandの風景を思い浮かべて、作曲なさった曲を演奏されました。エフェクターを使っての二重奏部分は、前日決まったのだそうです。エフェクターなるものの威力は、この発表会で存分に知ることになりましたが、一人で多重奏的な複雑な演奏ができるらしいのです。もちろん、こういうことは上級レベルの方のなすことであって、私などは未だに左手と闘っておりますが。

 なんでテルミンなの?という問いかけには、百人百様の答えがあると思いますが、私にとってはまったく好奇心の対象そのものです。楽器に触れないで、エーテルの狭間にある音を拾い集めるのはなんとロマンに満ちていることか。音については、同じ楽器から無機質の電気音しか聞こえない場合もあるし、えもいわれぬ透き通った音が出る場合もある。ひたすら後者の音を追及して、練習しているわけですが、やはりうまい人はそれなりの練習をこなしています。
 男性では、機械の構造から入る方が多いと聞きます。昼間は某大学の電気工学かなんかで研究活動をして、隙間をねらってテルミンの演奏活動をされているかたとか。自分で今までに発売されたテルミンに改造を加えて、楽器を再構築してしまう方とか。
 女性では、あまり機械の中身に関心を示す方はまれなようです。世界的テルミン奏者のパメラ・カースティンという方は、テルミンの箱の中身に興味を持って始められたということですが。

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 昨年だったか、今年の初めだったか学研の「大人の科学」でテルミンが取り上げられましたね。それがすごい反響だったので、ふろく版を改良した製品版が発売されるそうです。税込み価格が9,975円というお手ごろ価格です。それが、今回の会場で置かれていました。休憩時間に皆さんおそるおそる試し弾きをされていましたが、わりと本格的な音がでるようです。私も三台目のテルミンを買っちゃおうかな、と密かに考えております。

http://otonanokagaku.net/index.html

 以上、フレンズ・オブ・テルミンの練習発表会に関するもろもろの事情でした。


大人の科学 製品版 テルミンPremium

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 学研
  • 発売日: 2008/12/18
  • メディア: 大型本



大人の科学マガジン別冊 シンセサイザー・クロニクル (Gakken Mook 別冊大人の科学マガジン)

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 学習研究社
  • 発売日: 2008/07/30
  • メディア: ムック



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ピンチヒッターでオペラ [音楽]

初オペラ『フィガロの結婚』

 ラッキーが舞い込んできました
 おととい18日の晩、ベッドでうとうと始めたときに電話が鳴りました。ねぼけ声で、「もしもし私ですが。」というと、
「明日の晩空いてない?」仲良しの友だちからでした。
「あ、あ、空いているけど。」とちょっといぶかしげな私です。
「オペラ行かない?」
「お、お、オペラ?」
訳を聞けば、別の友だちと行くはずだったのが、その人がおとといの朝に捻挫をされて動けないので、行ける人を探しているとの事でした。私は映画でも行こうかななんて思っていたぐらいなので、
「行く、行く。」と即座に応答し、早速、頭の中ではなにを着て行こうかなんて、前向きもいいところです。

 そこで昨日、ルンルン気分で肥後橋のフェスティバルホールへ行ってきました。
フェスティバルホールは、かつては東洋一のコンサートホールだという触れ込みで建ったところですが、朝日新聞社の社屋と共に来年から再建築されるので、こちらでのコンサートもあとひと月あまりです。2013年には、フェスティバル・タワーとして生まれ変わる予定だそうです。

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 昨日の出し物は、ポーランド国立ワルシャワ室内歌劇場オペラの『フィガロの結婚』でした。テレビでは、観る機会があっても生オペラは初めてです。なにしろ行こうかどうしようと迷っている間に終わってしまうのが、常でした。だから、今回はいいチャンスです。あまりメジャーなチームではないので、価格もわりとお値打ちでした。もちろんピンチヒッターでも、楽しむのは私だから、ちゃんと払いましたよ。といっても、今度、京都の顔見世に行くチケットは私が取ったので、ちょうどおあいこでした。

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 あまりにも有名な演目なので、あらすじははしょりますが、モーツァルトのオペラの代表作です。ポーランド国立ワルシャワ室内歌劇団は、11月13日の愛知県芸術劇場を皮切りに29回の公園を日本各地で行なっています。ほとんどが関東周辺で行われるようですが、最後は東京文化会館であるようです。『フィガロの結婚』と『魔笛』と『セビリアの理髪師』の三つを引っさげて、来日しています。同歌劇団は1999年に初来日し、今回で5回目を数えるそうです。

 幕が上がり、簡潔ながら重厚な装置が現れます。まずスザンナがソプラノで、自分の結婚の喜びを歌います。そして、フィガロの登場、二人の合唱・・・二人はアルマヴィーヴァ伯爵に仕えています。伯爵は好色な人のようで、スザンナを自分のものにしたいと思っているようです。伯爵夫人ロジーナはなんとか伯爵の浮気を止めさせようと、スザンナの力を借りるのです。そして、結婚式の夜、スザンナは伯爵をこらしめることになるのです。
 他にケルビーノという少年や実はフィガロの産みの母であったという女官長のマルチェリーナ、バルトロ(フィガロの父)など魅力的な登場人物が、ややこしく絡んできます。
 このころの貴族社会を風刺した喜劇(フランスのボーマルシェが書いた≪セビリアの理髪師≫がそれ)で、ロッシーニは、前半部分をモーツァルトの『フィガロの結婚』よりも後に書いたらしいです。同じ登場人物が出てくるのは、同じ原作を扱ったからなのです。それは、2000円もしたプログラムに書いてありました。
 当時の観客には、こういう面白おかしいものが人気だったのでしょうね。

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 オペラの歌詞は、舞台の両袖に設けられた電光掲示板に和訳で出てくるので、首を横に向けたり、正面に向けたり忙しかったです。あるところで、たぶんパードレという言葉が分かったので、これはイタリア語なんじゃないかと友だちに言っていましたが、種明かしは例のプログラムに書いてありました。
 モーツアルトが生まれた頃は、まだイタリア歌劇が全盛だったのだそうです。もちろんドイツ語のオペラも書いていますが、この歌劇はイタリア語で書いたそうです。モーツァルトも父親と一緒に行ったり、三度ほどイタリアに行っているそうです。

 歌い手たちは、なかなか上手でした。スザンヌもロジーナもケルビーノもアリアがとても美しかったです。フィガロ役の人は、ちょっと力強さが足りないように思いましたが、スマートなイケメンだったから許しましょう。マイクなしで、大劇場を響かせるのですから、よしとしましょう。



 初オペラは、大満足でした。リズミカルでテンポのいい展開はもちろん観るものを退屈させませんが、モーツァルトは、見せ場を作るのがうまいと思いました。登場人物の一人ひとりをクローズアップさせて、アリアよし、二重唱よし、アンサンブルよしで、登場人物の心情をうまく表していました。
 もう一つ印象に残ったのは、貴族が持っていたという「初夜権」。どうも奉公人の初夜を主人が受け持つという権利らしい。それもボーマルシェの喜劇が風刺し、貴族社会の封建制を批判したかったようなのですが、それが本当なら、なかなか革新的な内容をはらんでいたのですね。

 という訳で、行き帰り近年まれな寒波の中をルンルンと満足して帰ってきました。

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 今日のよそおいは、錆び紺の色無地にちょっとはで目の水色地に金銀の銀杏を散らした袋帯。御堂筋の銀杏並木に合わせたつもりなんですが・・・。羽織はなしでコートとショールをひっかけただけは、ちょっと寒いくらいでした。


モーツァルト:フィガロの結婚 ハイライツ

モーツァルト:フィガロの結婚 ハイライツ

  • アーティスト: ベーム(カール),ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2006/11/08
  • メディア: CD



モーツァルト:フィガロの結婚(全曲)

モーツァルト:フィガロの結婚(全曲)

  • アーティスト: メータ(ズービン),モーツァルト,フィレンツェ五月祭管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ソニーレコード
  • 発売日: 2001/09/19
  • メディア: CD



ロッシーニ:セビリアの理髪師

ロッシーニ:セビリアの理髪師

  • アーティスト: フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1995/07/01
  • メディア: CD



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加藤登紀子コンサート [音楽]

日本酒の日コンサート

 10月は私の誕生日なのでかどうか分からないけど、わが妹が加藤登紀子のコンサートのチケットを取ってくれました。
10月1日の多可町文化会館ベルディーホールにおいての『加藤登紀子 日本酒の日コンサート』です。『ほろ酔いコンサート』かなと思いましたが、ちょっと違いましたね。聞くところによると、多可町は日本酒の原料米の王様、山田錦の発祥の地で、当コンサートも16回目を数えるそうです。主催は多可町文化連盟、後援は略、協賛がJAみのりです。

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 本当はきもので行きたかったのですが、午後は神河町にある両親の墓参りをすることになり、着替える時間がなさそうなのであきらめました。お酒の日にちなんだコンサートとあって、前のテーブル席には小さいお酒のビンがならんでいました。私たちはそのすぐ後ろの席で、指をくわえて見ていました。

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 やがて、真っ赤なブラウスに黒のロングスカートの登紀子さんが登場。一曲目は「あまのじゃく」から入りました。その後、マイクの横の机に置いてあるちょっと大き目のお酒のびんからお酒をついで、かんぱーい。その時のトークが「お酒のある方はお酒で、お酒のない方は歌に酔ってくださ~い。」しかたないや。お酒は家に帰ってからということで、登紀子さんが美味しそうにお酒を飲み干すのを見ていました。

 今日のプログラムは、一曲目の「あまのじゃく」に続いて、
「時代遅れの酒場」「わが人生に悔いなし」「難破船」いずれも加藤登紀子作詞・作曲か作曲のみ。そのあと「この空を飛べたら」「わかれうた」中島みゆきの作詞・作曲ですね。「ひとり寝の子守唄」「檸檬Lemon」加藤登紀子作詞作曲、「夜空ノムコウ」スガシカオ作詞、川村結花作曲と続きました。それで第1部が終わりました。いやはや、おトキさんの飲みっぷりも見事なら、歌いっぷりもなかなか味わい深かったです。魅力的な低音部からビブラートする裏声の高音部への移行。はやくも酔いしれました。

 休憩時間には、お茶とコーヒーがふるまわれました。お酒のない人にもせめてものもてなしをという意味でしょうか。 

 二部が始まりました。今度は黒のモーニングを思わせるチュニックをはおって、花柄のフリルのスカート。これが、パラソルのように広がって、微妙なゆれかたをしていました。こちらはシャンソンが中心でいわば加藤登紀子の真骨頂の分野、私も大好きです。「さくらんぼの実る頃」「時には昔の話をしよう」宮崎アニメの『紅の豚』で登場したもの。トークの中で『崖の上のポニョ』の話になり、その中でおトキばあさんとフジモトが出てくるあたりで笑わせていました。そして、藤本という姓がこのあたりは多いよねと言っておられましたが、実は亡くなられた旦那さまの姓であることは、皆さんご承知なんでしょうね。その次に、尾崎豊のラストソング「I LOVE YOU」、ジャック・ブレルの詩を訳した「愛しかない時」、「愛の賛歌」これは加藤登紀子が歌手になる決め手になったエディット・ピアフの十八番。そして、「愛燦燦」と「Revolution」後者は、威勢のいい歌でした。さいごに「百万本のバラ」を観客と一緒に大合唱をしました。そのあとアンコールと思いきや、多可町のおやじコーラスが登場され、「知床慕情」を歌われました。そしてもう一曲、何だったかな。おやじコーラスが降りられてから、「飾りじゃないのよ涙は」でフィニッシュでした。

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 私は、すでに何枚かCDを持っているのですが、「愛しかない時」が気に入ったので「シャントゥーズTOKIKO」を買うことにしました。
そして、ちゃっかりとサインしていただいて、思いがけなく握手までしていただいて、目がウルウルなりそうでした。

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 もちろん、登紀子ブランドのお酒「ほろよい物語」も買いました。なんと、今年のお酒で16本目の銘柄になるのですって。今度、お酒の好きな友だちが来たときに飲む予定です。

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 おしなべてコンサートは良かったです。伴奏もピアノとヴァイオリンだけだったのも、良かった原因だと思います。歌唱力のある人には、あまり大げさなバックはいりません。声の繊細さ、歌の味を打ち消してしまうのではなく、調和がとれていてなおかつ間奏の時には思いっきり存在感をアピールしていました。あまり劇場に行ったりしない妹は、三倍の値打ちがあったなともらしていました。ありがとうね。妹よ、おトキさんよと感謝しつつ、劇場を出ました。


SONGS うたが街に流れていた

SONGS うたが街に流れていた

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: UNIVERSAL INTERNATIONAL(P)(M)
  • 発売日: 2008/05/07
  • メディア: CD



シャントゥーズ・トキコ~仏蘭西情歌~

シャントゥーズ・トキコ~仏蘭西情歌~

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル インターナショナル
  • 発売日: 2006/05/10
  • メディア: CD



今があしたと出逢う時

今があしたと出逢う時

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル インターナショナル
  • 発売日: 2004/11/26
  • メディア: CD





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大阪クラシック2008 [音楽]

今年で三年目

 昨年、大阪クラシックの情報をいただいて、今年こそ行ってみなくてはと思っていました。9月7日が第1日ということで、プログラム1番(11:00~11:30)の大植さん指揮のオーケストラ演奏をめがけて行きました。
大阪クラシックとは、大阪市、大阪フィルハーモニー協会、御堂筋まちづくりネットワークが実行委員会となって、御堂筋一帯を一週間に亘ってクラシックの音楽であふれさせようという企画です。プロデュースは大フィルの大植英次さん、一週間でなんと65回に及ぶコンサートが計画されています。場所は大阪市役所をはじめ、銀行のIFフロアや学校の講堂、喫茶店、お寺と多岐にわたっていますが、すべて御堂筋沿いにある施設です。一部、有料のコンサートもありますが、多くは無料で、人気のコンサートには整理券が発行されます。

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 10時半に大阪市役所に着きましたが、時すでに遅し、プログラム1のコンサートは満員御礼で締め切っていました。しかたなく4時からの7番のコンサートの整理券と、すべての出し物が載っているプログラムをゲットしました。ちなみにプログラム1の演目は、ワーグナーの楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第1幕への前奏曲とシベリウスの『フィンランディア』だったのです。後者の曲は、ちょっと前にBS2の『名曲探偵 アマデウス』で取り上げていたので、ぜひとも聴きたかったのですが、次回のお楽しみにいたします。

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 4時まで待つにしても、時間がたくさんあります。中ノ島公会堂の東側にある大阪市東洋陶磁美術館でたしか『鼻煙壺1000』という企画をやっていたことを思い出して入って時間を潰すことにしました。
 ビエンコなんてカタカナで書くと、はいからな感じがしますが、嗅ぎ煙草を入れるビンのことです。煙草はアメリカ大陸からヨーロッパに伝わり、中国に入ったということですが、中国清王朝において密閉式のつぼ型になったそうです。コレクターとして知られる沖正一郎氏が大阪市に寄付したことを記念して、展覧会を開催したそうですが、なんとその数1200点に及ぶそうです。
 初期の鼻煙壺は陶器で出来ていて、白と青の素朴なものだったのが、色彩が豊かになり、やがてガラスで作られるようになり、そのガラスも透明なもの、色つきのもの、とんぼ玉のようなものと多彩な製品が出来てきます。香水入れにも似た手のひらサイズの大きさの壺は工芸品として進化を遂げていきます。蓋が凝っていて、宝石がのっかったものが多かったです。本体もめのうや琥珀、象牙、鼈甲、トルコ石、オパール、ラピスラズリ、水晶とためいきが出るような細工物になっていきます。また、珍しい石(化石が入ったようなもの)も多数ありました。細工や絵の緻密さも、驚くばかりで、たとえばガラスでできた白菜の表面には小さい青虫がのっかっていたり、透かし彫りが施してある象牙のものや陶器製のもの、今日はこれだけ観に来ても充分価値があったと思います。

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 ちょっと眼が疲れたので、美術館の中のティーサロンへ。バラのジュースとやらを飲んでみました。ほんのり甘く、上品なお味でした。

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ジャニス・ジョップリンのこと [音楽]

夭折のロック・クイーン

 ハイビジョンで録画しておいた、6月25日の特集番組『世界のディーバ ジャニス・ジョップリン』をきのう(7/5)観ました。
私がジャニスを知ったのは27才の時、すでにジャニスはヘロイン中毒で亡くなっていました。友だちのうちで、アルバム『パール』を聞かせてもらったのです。ショックを受けました。すごいダミ声、振り絞るように歌う、ロックなのかブルースなのか見分けもつかなかったです。
 でも、それ以後、はっきり言ってジャニス以上の歌にお眼にかかったことがない。私の音楽の観賞眼は、大きく形成されてしまったといっていいでしょう。当時、図書館で『生きながらブルースに葬られて』という本も借りて読みました。歌のすごさの裏には、不幸な彼女の人生がありました。

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 特集番組の題には、『 ・・・恋人たちの座談会』という副題がついていて、ジャニスの元恋人たちが彼女について、彼女との恋について語るのです。NHKにしては思い切った企画でした。
 四人の恋人のうち、二人が元のバンド『ビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニー』のメンバーで、初めて惹かれた男(ジェームズ・ガーレイ)が妻帯者。子どももいたので、家庭に帰っていきます。同じメンバーのサム・アンドリューも恋人的な関係になります。しかし、“怒りキャラ”と“可哀想キャラ”をあわせ持つジャニスは、サムも手なづけるのに苦労し、別れることになります。カントリー・ジョー・マクドナルドもギタリストで、意気投合し、しばらくは生活を共にしますが、ジャニスの支えにはなれませんでした。
 そのころ最大級の野外音楽祭“モンタレー・ポップ・フェスティバル”では、ジミーヘンドリックやサイモン&ガーファンクルたちと歌いますが、一躍ジャニスの歌唱力が注目されるようになります。その後、収入は十倍にも増えたそうです。
 ジャニスは、バカンスでブラジルの海岸に行ったときに、デービッド・ニーハイムと運命的な出会いをします。彼だけが音楽に関わっていなかったけれど、そのために人間としてありのままに付き合えたのかもしれません。デービッドは彼女のことを「めずらしく自由な女性だ」と感じたそうです。そのころ、ジャニスは歌手として大きく飛躍し始めていたので、コンサートやレコーディングに忙しく、バカンスを切り上げて帰らなければなりませんでした。デービッドは自分探しのために世界旅行を続けることになります。彼がクレタ島に着くころに、アメリカ大使館あてに手紙を出す、そしてネパールのカトマンズで会おうと約束をします。ところが、ジャニスの手紙はデービッドがトルコに旅立った後にすれ違いでクレタ島に着くのです。
 そして、ジャニスは、1971年の10月4日、薬物の過剰摂取のためにホテルで命を落とすのです。ジャニスが27才のときでした。

 ジャニスは、テキサスの高校時代に『もっとも不器量な男子生徒』(女なのに)というレッテルを貼られてから、故郷に失望し、家出して大学に通っています。その大学も中退して音楽の道に入るのです。その頃、ニューヨークで一人の男と婚約して、ふるさとに一時帰るのですが、その男もジャニスがいない間に、他の女性と暮らし始めていました。ジャニスにとって本物の愛が信じられなくて、一夜限りの恋を重ねたといいますが、だんだん愛をはぐくむことに臆病になっていったのかもしれません。

 あまりにも短かった命、自分でも命を落とすとは思っていなかったでしょう。
かわいそうでは語れないし、理解しようもありません。でも、デービッド・ニーハイムの存在は、ジャニスにとって救いのように思えました。彼は旅先でジャニスの手紙を待ちに待っていたし、今でも本気で愛していると言っていました。ジャニスの恋は、歌うことや歌を作ることの原動力になったのでしょう。
 四人の男たちは、ジャニスの思い出話をします。それぞれが、一番ジャニスが愛していたのは、自分だといわんばかりの様子がなんとなく間抜けて見えました。

 ジャニス・ジョップリンの歌声は今も生きています。だれもが超えられないような高みをなして。『ジャニスの祈り』『サマータイム』は、私が好きだった曲です。




 
 

18の祈り~ベスト・オヴ・ジャニス

18の祈り~ベスト・オヴ・ジャニス

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ソニーレコード
  • 発売日: 1995/05/01
  • メディア: CD



パール

パール

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ソニーレコード
  • 発売日: 2000/05/24
  • メディア: CD



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