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最近、読んだ本 [本]

葉室麟と三上延

 葉室麟の「乾山晩愁」。 
葉室麟の本は、これで3冊目だったかな。
短編集で、(乾山晩愁)(永徳翔天)(等伯慕影)(雪信花匂)(一蝶幻景)が収録されている。
ほとんどが画家や工芸家の話である。短編なので、どれもあまり細かな描写はなく、時代背景や人間関係のからみあいに力点がおかれている。
この中で、私が面白かったと思うものは、(乾山晩愁)と(雪信花匂)だ。
(乾山晩愁)は、あの尾形光琳の弟尾形乾山(深省)が、兄の華やかな創作人生の影で、その栄光に憧れつつ、兄の遺した女と子どもの世話や、わが道陶芸の探求に励む。元禄時代の赤穂浪士打ち入りの事件にからめながら、大器晩成であった乾山の生き方を描いたものだ。
商人が力を持ちつつあった時代に、町人文化が花開いたさまをなかなか興味深く描いてあったと思う。

(雪信花匂)は、狩野探幽の姪として育った雪信が、狩野派の主流争いの中で、独自の画風を編み出して行く物語である。女性としてもなかなか率直に、絵の腕前を認めてもらえない時代、雪信は守清(清三郎)との恋もつらぬく。雪信は兄の不始末もあり、守清とともに京都で活路を見出そうとする。井原西鶴は「好色一代男」の中で、遊郭島原の薫太夫の小袖の秋野の絵が、雪信の描いたものとして語っている。また雪信の娘、春は春信となって、花鳥画を描くようになったそうだ。当時の女性の生き方として、職業的に閉塞していた時代に、雪信は好きな絵を描き通し、好きな人との恋もつらぬいた生き方は見事という他はない。

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三上延の「ビブリア古書堂の事件手帖」は友だちに紹介された本だ。
表紙はアニメ調の絵になっていて、若者向きの小説らしいが、今売れに売れているらしい。
私は、舞台が鎌倉というのも気に入って(尊敬する先輩が住んでいらっしゃる)、さっそく勧められるがままに買って読んだ。
まあ軽い調子で描かれていることは、否めないが、テンポのいい小説である。
一話一話が短編になっていて、それぞれの話が古本屋で伝説的になっている高価本にまつわる話だ。
一巻では、夏目漱石『漱石全集 第八巻「それから」』/小山清『落穂拾い・聖アンデルセン』/ヴィノグラード・クジミン『論理学入門』/太宰治『晩年』
二巻では、坂口三千代『クラクラ日記』/アントニイ・バージェス『時計仕掛けのオレンジ』/福田定一『名誉随筆 サラリーマン』/足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』
になっている。
主人公は、五浦大輔。二十三歳で就職難につきビブリア古書堂の店員となる。店長の篠川栞子を慕っている。その他、常連的な登場人物がいる。篠川栞子の描き方が、かなり男性的な眼から描かれているようで、カマトトというかぶりっ子のような女性に見えるのは、熟女の僻みであろうか。
それ以外は、まあ面白い。暇つぶし的な小説だといいながら、つい先ごろ三巻を見つけて買ってしまった。

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秋月記 (角川文庫)

秋月記 (角川文庫)

  • 作者: 葉室 麟
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/12/22
  • メディア: 文庫



風渡る (講談社文庫)

風渡る (講談社文庫)

  • 作者: 葉室 麟
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/05/15
  • メディア: 文庫



ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)

ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)

  • 作者: 三上 延
  • 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2012/06/21
  • メディア: 文庫



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