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本でも読むか~ [本]

「秋月記」と「宵山万華鏡」

 京都で風邪をもらってきて、沈殿していました。
今日は、昼ごろから病院へ行ってきましたが、病院でもあっちでコンコン、こっちでゼェゼェやってました。
師走なのに、ちっともその気(大掃除の)になれません。

塩飴でも舐めながら、少し前に読んだ本のことを書いてみます。

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「秋月記」(葉室麟著)・・・角川文庫
 「実朝の首」「蜩の記」「乾山晩秋」につづき、四冊目。
 いきなり、隠居した余楽斎(在りし日の小四郎)が、藩の陰謀を企てたという罪で捉えられる場面から始まる。秋月藩と福岡藩は、支藩と本藩の関係にあり、本藩が歴代にわたり優位に立ち、支配しようとしている。小四郎たちは若い頃、理想に燃えて藩の旧勢力を追い出した経歴がある。藩の要職を担う頃になって、自分たちが追い出した人物(宮崎織部)が、じつは秋月藩の自主性を願って、捨石になったことが理解できた。
いま今度は自分が捨石にされようとしている。離れ島に流されようとする前に、恩赦で帰郷した宮崎織部を訪ねる。小四郎が言う。
「政というものは、どのように行っても、すべての者によいということはないようです。それゆえ後の世のひとに喜ばれるものを何か造っておきたくなる。・・・」
織部は秋月藩の民百姓のために石造りの橋を残している。
呆けた姿の織部が言う。
「間小四郎、おのれがおのれであるためにためらうな。悪人と呼ばれたら、悪人であることを楽しめ。それが、お前の役目なのだ。」
小さい藩が存続するために捨石となり、自らは人の呼びたいように言わせる先人たちの物語であった。
小四郎は何を残したのか?昔、橋が壊れそうになったとき、一人の百姓娘を助けたことがあり、その娘が山仕事の合間に作り出したあるものに藩が救われたといういきさつがあった。
まさに周五郎~周平~葉室麟へと受け継がれる武家ものの系譜といえよう。

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「宵山万華鏡」(森見登美彦)・・・集英社文庫
 「夜は短し歩けよ乙女」につづく二冊目である。あと「太陽の塔」を持ってはいるものの、まだ読んでいない。
この人の迷路宮のような文体に圧倒されて読むようになったが、特別なテーマやメッセージがあるわけではない。ナンセンス文学というのだろうか、内容はバカばかしいが、読んでいて不思議な匂いや味がする。読後感は、ラムネ菓子はたまた炭酸ソーダー水のようなさっぱり感がする。梨木香歩も不思議世界を構築してくれるが、あの方はちゃんとした方向感覚のようなものがあり、だれもが予定された出口へといざなってもらえる。
森見さんはどうだ。まだ分からん。「宵山万華鏡」は、京都の祇園宵山を舞台として、あの俗物的(昔はいざしらず今は)な宵山を自分自身の独自な不思議な時空間を作り出している。
見出しがこうである。
<宵山姉妹>
<宵山金魚>
<宵山劇場>
<宵山回廊>
<宵山迷宮>
<宵山万華鏡>
登場人物は、俺やら千鶴さん、柳さん、金魚を思わせる赤い浴衣の少女たち、山田川さん、乙川さん、その他キテレツな人物多数。
どことなしに懐かしい景色と匂いに満ちた乙女チックな物語であった。
今、読んでいるのは森見氏の「ペンギン・ハイウェイ」。これも小4の子どもを主人公にした、なかなかぶっ飛んだ小説である。とうぶん楽しめそうだ。


風渡る (講談社文庫)

風渡る (講談社文庫)

  • 作者: 葉室 麟
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/05/15
  • メディア: 文庫



有頂天家族 (幻冬舎文庫)

有頂天家族 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 森見 登美彦
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2010/08/05
  • メディア: 文庫



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